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太田忠司さん「死の天使はドミノを倒す [本☆☆]


死の天使はドミノを倒す (文春文庫)

死の天使はドミノを倒す (文春文庫)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫



表紙の絵画はオラース・ヴェルネ「死の天使」という作品で、ここからインスピレーションを得たのかもしれません。

売れない作家の兄・鈴島陽一と、人権派弁護士の弟・薫。家族と絶縁し父親の葬儀にも顔を出さない弟に、陽一は腹立たしさを抑えられないが、やがて薫が失踪したことを知る。薫は自殺志願者に自死を唆す“死の天使”嶌崎律子の弁護を引き受けていた―。待ち受けるサプライズを、あなたは見抜けますか?
(「BOOK」データベースより)

読後感はとっちらかった感じ、でした。
重いテーマを扱ってはいますが、そこにフォーカスしきれない印象を覚えました。もっと深く掘り下げてもよかったんじゃないかと思います。

にっちもさっちもいかない状況に追い込まれた主人公の自嘲さがしつこく、読む進むうちに飽きてしまいました。
また、主人公との書き分けなんでしょうが、堀記者の喋り方が妙に爺臭かったです。

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万城目学さん「悟浄出立」 [本☆☆]


悟浄出立 (新潮文庫 ま 48-1)

悟浄出立 (新潮文庫 ま 48-1)

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 文庫



万城目さんが親しんだ中国古典をベースにした短編集です。

「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤憤」「父司馬遷」の5編が収められています。

砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ? でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷に見向きもされないその娘。中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て、人生の見方まで変えてしまう連作集。
(出版社HPより)

西遊記の沙悟浄はもとより、三国志の趙雲、虞美人、司馬遷といった耳にしたことがある人物が主人公のため、古代中国を舞台にしていても敷居が低く感じました。

万城目さんらしい奔放な想像力というのはなく、淡々と物語が展開されます。
けれども、脇役たちがその役割をよしとせずに行動を起こすターニングポイントが、それまでの鬱屈や葛藤と対比するように鮮やかに描かれます。

『悟浄出立』を書くきっかけは中島敦さんの『悟浄出世』だったそうです。
昔読んだ『李陵・山月記』には収録されてなかったかなぁ。記憶がない。
これを機に読んでみようかと思います。

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伊坂幸太郎さん「首折り男のための協奏曲」 [本☆☆]


首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/11/28
  • メディア: 文庫



惹句に嘘はいけません。それとも読んでいない?

「首折り男の周辺」「濡れ衣の話」「僕の舟」「人間らしく」「月曜日から逃げろ」「相談役の話」「合コンの話」の6編が収録されています。

被害者は一瞬で首を捻られ、殺された。殺し屋の名は、首折り男。テレビ番組の報道を見て、隣人の“彼”が犯人ではないか、と疑う老夫婦。いじめに遭う中学生は“彼”に助けられ、幹事が欠席した合コンの席では首折り殺人が話題に上る。一方で、泥棒・黒澤は恋路の調査に盗みの依頼と大忙し。二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る! 伊坂幸太郎の神髄、ここにあり。
(出版社HPより)

テンポのいい展開とセリフは伊坂さんらしくスイスイ読めます。
それぞれの物語もエンターテイメント性があり、長編ほどではありませんが、伏線が仕掛けられていたりと楽しく読みました。

ただ、短編では「らしさ」がだせない、ことはないと思うのですが。
それぞれが繋がりがあるようで実はない(と後書きにあります)ためか、尻切れ感があって物足りなさを感じました。

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吉永南央さん「糸切り」 [本☆☆]


糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)

糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)

  • 作者: 吉永 南央
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/12/01
  • メディア: 文庫



「お草さんシリーズ」第4弾です。
決して安楽椅子探偵にならないお草さんです。

「牡丹餅」「貫入」「印花」「見込み」「糸切り」の連作短編5編が収められています。
全て陶芸用語のようです。

観音様が見下ろす街で、珈琲豆と焼き物のお店『小蔵屋』を営む、おばあさんの杉浦草。常連客からは親しみを込めて、「お草さん」と呼ばれている。その『小蔵屋』がある紅雲町にある疏水のそばに、ぽつんとある商店街というには小さな「ヤナギショッピングストリート」がある。そこへ、雨の日に買い物に出かけたお草さんは、さみしそうな男が落としていった手紙を拾おうとして、黒い車にひかれそうになり、誤って電器店の店先にあるマスコット「ドリ坊」を壊してしまう……。
電器店の店主の五十川からは、高額の弁償を迫られるが、商店街の他の人たちが間に入り、弁償の件は棚上げとなる。しかし、草が気がかりなのは拾った手紙のほうだった。
手紙の「帰っておいで」の文字は、水ににじんで、器の牡丹餅の景色のよう。それは、一体、誰から誰への手紙なのか。そして、小さな商店街にもある〈秘密〉があった。
北関東の地方のある街を舞台に、老若男女が織りなす日々を「小さな謎」を軸に、たおやかに描き出した、コーヒーのように、すこしビターな味わいの短編集。
(出版社HPより)

シリーズを重ねても、ストーリイ展開や描写など丁寧さが失われていないと思います。
それはお草さんの生活や食や装いにも表れています。(見習えるかどうかは別…)

また、町に暮らす人々や町そのものの歴史や背景があって、その伏流水のように(日常の謎的)事件が発生し、一切合切を含めて解決に導くお草さんの齢を重ねた知恵と思い切りの良さが物語の魅力なんだと思います。


ただ、今回はどこか焦点の合わなさを感じました。

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道尾秀介さん「貘の檻」 [本☆☆]


貘の檻 (新潮文庫)

貘の檻 (新潮文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 文庫



道尾さんらしい重苦しい圧迫感を覚えるミステリです。

1年前に離婚した大槇辰男は、息子・俊也との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子を駅で見かける。32年前、父に殺されたはずの女が、なぜ――。だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられ、命を落とす。辰男は俊也を連れてO村を訪れることを決意。しかしその夜、最初の悪夢が……。薬物、写真、地下水路。昏い迷宮を彷徨い辿り着く、驚愕のラスト。道尾史上最驚の長編ミステリー!
(出版社HPより)

信州の寒村と因習・習俗、過去の惨劇が伏流となって現在によみがえる展開は横溝正史を彷彿とさせますが、血腥い猟奇殺人にならないところが道尾さんテイストです。

心臓病の薬として医者から大量にせしめた薬が中毒をもたらし、辰男が見る悪夢が現実との境目を曖昧にして、物語に混沌をもたらします。さらにO村の方言が異邦感を際立たせます。
このくだりが非常におもしろいです。道尾さんの筆力ゆえでしょう。

単なるミステリではなく、小説としての面白さを堪能しました。

ただ、終盤の「息抜き穴」を探すくだりはややご都合主義に感じました。

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三崎亜記さん「ターミナルタウン」 [本☆☆]


ターミナルタウン (文春文庫 み 54-1)

ターミナルタウン (文春文庫 み 54-1)

  • 作者: 三崎 亜記
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/10/07
  • メディア: 文庫



かつては栄華を誇ったものの、時流から取り残された事物を悲哀とともに描いた三崎さんらしい作品です。

まったく新しい「町興し」小説、ここに誕生。
ターミナルタウンとして鉄道とともに発展してきた町、静原町。
しかしあるとき、乗り換え路線の廃止により、ほとんどすべての列車が、この町を通過することになった――。
鉄道に忠誠を誓った町が、鉄道を失ったとき。そこには何が残るのか。
凋落したこの町に、人を呼び戻すことはできるのか。
さまざまな人の思惑が交錯する、誰も見たことのない「町興し」小説。
(出版社HPより)

ターミナルタウンだった町が一転、通過駅となったことで「タワー通り商店街」は活気を失います。通勤客を当て込んで作った「光陽台ニュータウン」は廃墟となります。

タワー管理公社に勤務する影を失った響一や、鳴先隧道トンネルで500名の乗客と共に消えた下り451列車消失事件、首都から8kmの長さで続くホーム、種からトンネルを育てる「隧道士」など三崎さんの構築する世界を堪能できます。

ただ、最近の作品を読むたびに。三崎さんの特徴である不条理さが薄まってきている気がします。
デビュー作から作品世界を楽しみにしていた身としては残念です。

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誉田哲也さん「増山超能力師事務所」 [本☆☆]


増山超能力師事務所 (文春文庫)

増山超能力師事務所 (文春文庫)

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫



超能力者が社会的地位を得ているという世界でのミステリです。超能力者≒探偵という設定が面白いです。

信頼と実績の当事務所が、超能力で人助け!
ここは、超能力が事業認定された日本。
日暮里駅から徒歩10分のちょっとレトロな雑居ビルの2階に増山超能力師事務所はある。
所長の増山率いる、能力も見た目も凸凹な所員たちが、浮気調査や人探しなど悩み解決に奔走。
メンバーは……
「面倒臭い」が口癖なのに、女にめっぽうモテる所長・増山
才色兼備で気が強い、元女番長 悦子
エロいことを考えては怒られる見習い脱出の篤志
見た目は不細工、おなかも弱い健
制御不能な能力が玉にきず、美形の見習い明美
超能力より年の功 経理担当の朋江
超能力でいい思いなんてほとんどなかったですね ──某超能力師 29歳
というように、超能力がつかえても、そこは人の子。
異端ゆえの苦悩や葛藤を時にユーモラスに時にビターに描いた人情〈超能力〉小説誕生!
(出版社HPより)

個性的なメンバーが様々な依頼を解決していきます。浮気調査だったり、殺人事件だったり。

超能力者といっても千差万別。万能じゃないってところがミソです。
けれど、探偵小説、ミステリかといえばそうではないように思います。

ヒューマンドラマになるのかな。

シリーズ1作目ということで、世界観の説明や登場人物の性格付けに重心があったように思いましたが、キャラクターがそれぞれ立っているので楽しめました。

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山口幸三郎さん「探偵★日暮旅人の探し物」 [本☆☆]


探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)

探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)

  • 作者: 山口 幸三郎
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/09/25
  • メディア: 文庫



探偵ものかと思ったら、違っていました。

保育士の山川陽子はある日、保護者の迎えが遅い園児・百代灯衣を自宅まで送り届ける。灯衣の自宅は治安の悪い繁華街にあり、日暮旅人と名乗る灯衣の父親は探し物専門の奇妙な探偵事務所を営んでいた。澄んだ目をした旅人と、人形のように美しい灯衣。名字の違う不思議な親子に興味を惹かれた陽子はたびたび事務所を訪れ、旅人が持つ能力を知ることになる。音、匂い、味、感触、温度、重さ、痛み。旅人は、目に見えないモノを“視る”ことで探し物をしているというのだが―。
(「BOOK」データベースより)

視覚以外の五感を失った日暮旅人が、その代わりに得た特殊能力で失くし物を探す探偵として活躍する物語です。

ヤンキーのような旅人の助手、裏世界で生きているような旅人の主治医など、アウトサイダーたちが集まった登場人物たちですが、暴力シーンはなく、事件らしい事件も発生しません。
ただ、大切なものを失くしてしまったという依頼を受けて探し物をします。ヒューマンドラマなんでしょうか。

シリーズ1作目ということなのか、旅人の能力や登場人物たちの紹介がメインになっているように感じました。
それと、保育士の山川陽子が失くしてしまった、子どもの頃から大切に持っているキーホルダーが旅人との関係を繋げる鍵になるように思いました。

続編、どうしようかな。

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東野圭吾さん「ラプラスの魔女」 [本☆☆]


ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫



作家デビュー30年だそうです。
これだけ長い間、コンスタントにヒット作を飛ばせる作家さんはなかなかいないのではないでしょうか。

作家デビュー30周年記念作品――彼女は計算して奇跡を起こす。
円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。
これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品ができました。 ――東野圭吾

SF風の設定ですが、違和感を覚えっぱなしでした。「そんなに上手く行くかなあ」と。
2つの温泉地で起きた硫化水素による死亡事故が実は人為的であったとして、不確定要素があるはずで、そこまで「計算」できるのかなあ、という疑問が尽きませんでした。
(「たまたま」上手く行ったんだとしたら、物語の前提が崩れてしまうし)

前半は、高精度で「予測」ができる謙人や円華にすげー、と思ったんですが、終盤は「あれ?」と思うこともしばしばありました。
それとともに物語への期待も尻すぼみになっていきました。

終盤で甘粕才生・謙人親子の脳に関するある欠陥が明らかにされるのですが、だから才生が事件を引き起こしたというのは短絡的ではないかと思いました。

なんだか違和感しか残らない読後感でした。


映画化されています。主要キャストはなかなか力が入っていますね。
http://www.laplace-movie.jp/

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畠中 恵さん「すえずえ」 [本☆☆]


すえずえ (新潮文庫)

すえずえ (新潮文庫)

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/11/28
  • メディア: 文庫



シリーズ第13弾です。
若だんなの許嫁が決まりました。「やっぱり」という思いと「あれ?」という疑問と「これで」という安堵がありました。

「栄吉の来年」「寛朝の明日」「おたえの、とこしえ」「仁吉と佐助の千年」「妖達の来月」の5編が収録されています。

若だんなの許嫁が、ついに決まる!? 幼なじみの栄吉の恋に、長崎屋の危機……騒動を経て次第に将来を意識しはじめる若だんな。そんな中、仁吉と佐助は、若だんなの嫁取りを心配した祖母のおぎん様から重大な決断を迫られる。千年以上生きる妖に比べ、人の寿命は短い。ずっと一緒にいるために皆が出した結論は。謎解きもたっぷり、一太郎と妖たちの新たな未来が開けるシリーズ第13弾。
(出版社HPより)

これまでのシリーズと少し毛色が違います。
謎解きはもちろんあるのですが、若だんなが「将来」を考え始めます。ひいては妖たちにも影響を及ぼしてひと騒動が起こります。

思えば若だんなも立派な大人の年齢なんですよね。寝込んでばかりでいるので歳を忘れてしまうんですが。

(たぶん)永遠に歳をとらない妖たちと、歳を取り死を迎える人間との違いというのは前の巻でも描かれていたことですが、そういった「違い」はどうしても避けられないテーマだったんですよね。

変わるものと変わらないもの。お気楽だけではない、そんなことを少し考えてしまいました。

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