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新美健さん「明治剣狼伝 -西郷暗殺指令-」 [本☆]


明治剣狼伝―西郷暗殺指令 (時代小説文庫)

明治剣狼伝―西郷暗殺指令 (時代小説文庫)

  • 作者: 新美 健
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: 文庫



第七回角川春樹小説賞特別賞受賞作だそうです。
タイトルと内容が微妙に違う…。

幕府が倒れ、明治新政府が出来てから十年が経った。だが期待を裏切られた士族の不満は止まず、西南戦争が勃発。警視隊の藤田五郎と砲兵工廠の村田経芳は、内務卿・大久保利通より、西郷隆盛を助ける救出隊への参加を命じられる。だが彼らの合流前に救出隊長の旧庄内藩士・竹内が暗殺されてしまう。山県有明らの思惑も絡む救出隊の、真の目的は何なのか?近代日本が形作られていない混沌の時代、元新撰組の剣鬼と稀代の銃豪の二人が最後に下した決断とは……。
(出版社HPより)

剣狼? 西郷暗殺?
まあ、応募時のタイトル「巨眼を撃て」もちょっと違う感じがしますが。

まったく詳しくないですが、銃の構造や特性、リアルさがありました。
救出隊のメンバーも面白い面子が揃っています。藤田五郎(新選組の斎藤一の別名)、長州藩出身でアメリカ帰りの老ガンマン、船の扱いに長けた美少年、謎の女スナイパー…。ただ、キャラが弱いのが残念です。

その他、福地源一郎、陸奥宗光、河井継之助など登場、名前だけですが山県有朋や大久保利通も出てきます。

登場人物たちの思惑が絡み合い、ミステリの要素もあるものの、それも弱いです。

テーマや展開など面白いネタが満載なんですが、物語としての面白さまで至っていないように思いました。

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伊坂幸太郎さん「火星に住むつもりかい?」 [本☆]


火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/04/12
  • メディア: 文庫



伊坂さんだから、期待値が高くなってしまうんですが、これは…。

「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!
(出版社HPより)

ディストピア小説です。しかし、現代はこの作品で描かれた世界よりも先を行っているように思います。それも、巧妙に。

「正義」とはなにかを考えさせられました。
国家にとっての正義、個人の抱く正義、大衆にとっての正義。それは重なることはあっても決してイコールではないはずです。

物語では「平和警察」が悪で、無実の罪を着せられそうになる人々を救う「正義の味方」が正ではありますが、「水戸黄門」のように勧善懲悪とはいきません。(そもそも「水戸黄門」が権力者側だ)
そこにこの作品の皮肉と絶望があるように思います。

ページが多く、長い割にはカタルシスは得られず、拷問の場面は苦痛だし、今いる世界と作品世界が陸続きだと気づいた暗澹さで暗ーくなりました。

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恩田陸さん「EPITAPH東京」 [本☆]


EPITAPH東京 (朝日文庫)

EPITAPH東京 (朝日文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 文庫



EPITAPHとは墓碑銘、碑文という意味だそうです。
良くも悪くも恩田さんワールドです。

「EPITAPH東京」「悪い春」の2編が収められています。

東日本大震災を経て、刻々と変貌していく《東京》を舞台にした戯曲『エピタフ東京』を書きあぐねている“筆者K”は、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが・・・・・・。
将門の首塚、天皇陵・・・・・・東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「Piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作『エピタフ東京』。吉屋の視点から語られる「drawing」。
三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは――。
ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!
(出版社HPより)

エピソードを積み重ねた構成、東京だけでない都市の断面が脚本家Kの視点から描かれます。

Kがたまにバーで出会う「吉屋」という謎の男が面白いです。自分を吸血鬼と語る吉屋の独白の章が挟まれるのですが、むしろこちらのほうが興が乗ります。

例によって(?)最後の最後でブッ飛びました。
『近日公開』なにがしたいのか、わかりません。ヽ('ー`)ノ

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穂高明さん「むすびや」 [本☆]


むすびや (双葉文庫)

むすびや (双葉文庫)

  • 作者: 穂高 明
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/03/16
  • メディア: 文庫



商店街にあるおむすび専門店を舞台にした連作短編です。

就職活動で全敗し、家業のおむすび屋を手伝うことになった結。実家の商売に子供の頃からコンプレックスを抱いてきた結だが、おむすび作りに実直に向き合う両親の姿を目の当たりにし、気持ちに変化が訪れる。「結」という名前に込められた、亡き祖母の想いも前途を温かく照らしだす―。一人の青年の新たな出発を描いた成長物語。
(「BOOK」データベースより)

おかか、梅、生たらこ・焼たらこ、鶏そぼろ、糠漬け、キムパブ、鮭、赤飯、昆布、きゃらぶき、筋子、かやく、塩むすび、と具材の多さは魅力的ですね。
こんなおむすび屋さんが近くにあったらいいなあ、と思います。

商店街の人たちとのふれあいや幼馴染や友人との友情、家族の愛情など心温まる作品ではあるのですがみんながみんないい人だけということや物語にメリハリが感じられません。

各編に主人公の結や同じ商店街の同年代を配して、廃れつつある商店街と店を継ぐことの葛藤を描いているのですが、それぞれが淡泊すぎて伝わってこないのが残念です。

作中で提示された客足の謎も未解決のままだったし。

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北村薫さん「太宰治の辞書」 [本☆]


太宰治の辞書 (創元推理文庫)

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 文庫



「円紫さんと私」シリーズです。あれから幾年月…。

「花火」「女生徒」「太宰治の辞書」「白い朝」「一年後の『太宰治の辞書』」「二つの『現代日本小説大系』」の6編が収録されています。

新潮文庫の復刻版に「ピエルロチ」の名を見つけた《私》。たちまち連想が連想を呼ぶ。ロチの作品『日本印象記』、芥川龍之介の「舞踏会」、「舞踏会」を評する江藤淳と三島由紀夫。本から本へ、《私》の探求はとどまるところを知らない。太宰治「女生徒」を読んで創案と借用のあわいを往き来し、太宰愛用の辞書は何だったのかと遠方に足を延ばす。そのゆくたてに耳を傾けてくれる噺家、春桜亭円紫師匠。そう、やはり私は「円紫さんのおかげで、本の旅が続けられる」のだ……。
(出版社HPより)

結婚し、母となり、編集者としてのキャリアを積んだ「私」は歳をとっても旺盛な好奇心を失いません。

しかし、主人公で語り手の「私」の知的探検という色合いの強い作品で、かなりの部分を名著の引用で占められています。
日常の謎を解くには日々の生活の慌ただしさが邪魔をするのでしょうか。

「白い朝」は円紫さんとおぼしき少年が登場する短編です。
「一年後の『太宰治の辞書』」と「二つの『現代日本小説大系』」は読んでみて初めてエッセイとわかる非常に不親切なラインナップです。

これを「円紫さんと私」シリーズと呼べるのかどうか。そもそも小説と呼べるのかどうか。

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中村航さん「小森谷くんが決めたこと」 [本☆]


小森谷くんが決めたこと (小学館文庫)

小森谷くんが決めたこと (小学館文庫)

  • 作者: 中村 航
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫



後半4分の1はぐっときましたが、全体的にはなんだかなー、という印象でした。

波瀾万丈な人生を送ってきたドラマの主人公のような人物ではなく、どこにでもいる普通の男子の物語を書いてみよう――。
作家との話し合いの末、編集者が連れてきたのは三十代前半の会社員。しかし、話を聞いてみると、彼の半生はちょっと普通とはいいがたいものだった。
愉快だった小学生時代。暗黒面に落ちた中学生時代。悪友とのおバカな高校時代。美容師の女性と初めてきちんとした交際をした大学時代を経て、紆余曲折の後、憧れの全国映画館チェーンに就職が決まる。
しかし、そんなある日、彼は余命2か月、末期がんであることを告げられてしまう。
(出版社HPより)

実話をもとに中村さんが料理するとこうなります、という感じのおバカな男子の半生が描かれます。
ただ、その人生の記述がどれだけ必要かという疑問がずっと引っかかったままでした。

おバカで「仁義なき」(と親友に言われる)性格が延々と語られる必然性を感じませんでした。
あるいは闘病生活とのギャップを出したかったのかもしれませんが、個人的にはイラっときただけで逆効果でした。

「闘病者はこうあるべき」というものはありませんが、共感できずに終わりました。

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加藤廣さん「利休の闇」 [本☆]


利休の闇 (文春文庫 か 39-12)

利休の闇 (文春文庫 か 39-12)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫



秀吉と利休、二人の間の「茶の湯」の考え方の違いが次第に亀裂を生んでいく過程を描いた作品です。

利休vs.秀吉、最悪の結末までの真実とは一体――。
「信長の棺」著者が戦国最大にして最後の謎に挑む!
茶聖と称される千利休は、天下人となった豊臣秀吉の寵愛をなにゆえ受けたのか? しかし、最終的には秀吉から切腹を命じられ劇的な結末となったのはなぜか――井上靖の『本覚坊遺文』、野上弥生子の『秀吉と利休』、山本兼一の直木賞受賞作『利休にたずねよ』まで、日本人にとってこの出来事は永遠の謎であった。
戦国歴史ミステリーとして小泉純一郎元総理が絶賛、大ベストセラーとなった『信長の棺』にはじまる本能寺三部作ほか、独自の史観と圧倒的筆力で知られざる歴史の真実を掘り起こしてきた著者は、この「秀吉と利休の間で本当に何が起こっていたのか」を解き明かすべく、膨大な史料を読み込み、今回、まったく新しい解釈を読者に提示する。
明日をも知れぬ戦国時代、信長と武将にとって「茶」とは何だったのか? 天下を治めた秀吉がそれに変化を求めたがゆえの黄金の茶室と北野大茶会の理由とは? そしてそれを見抜くことのできなかった利休の誤算とは――84歳の著者が作家執念で挑んだ圧巻の傑作ミステリー!
(出版社HPより)

信長が天下を窺う時代、茶事が政治と結びついていきます。
信長に対しての茶人としては3番手だった利休(宗易)と、茶事のしきたりを学びたい秀吉(藤吉郎)との出会いがすべての始まりでした。

やがて秀吉が天下人への階段を駆け上がっていくのと同時に、茶の師匠である利休の権威もあがっていきます。
そして、次第に秀吉と利休の茶に対する考え方に乖離が生まれてきます。

基本的に利休目線で物語が進むせいか、周囲の人物たちの内面が描き切れていないように思いました。

それが逆に、秀吉と利休のすれ違いと意思疎通の欠如が生んだ亀裂が大きくなっていく様を感じることができます。
お互いが意固地になったのは権力者となった秀吉の傲慢さと、茶の道を究めようとする利休の頑なさゆえでしょうか。

権力者にすり寄り永らえるのがいいのか、我が道を進んだ挙句に滅びるのか、美学や生き方の問題でしょうか。


しかし、自慢ともとれる後書きに読後感の余韻が消し飛んでしまいました。

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北山猛邦さん「『クロック城』殺人事件 [本☆]


『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/10/16
  • メディア: 文庫



北山さんのデビュー作です。
終末観たっぷりの世界で繰り広げられる連続殺人ミステリです。

世界が終わる瞬間、あなたは誰と一緒にいたいですか?
「その時」だからこそわかる、本当に大切な人、守りたいもの。あなたなら、そのために人を殺せますか?
歓喜した。こんな本格の傑作に出会えようとは。――有栖川有栖
終焉をむかえつつある人類の世界。探偵・南深騎(みき)と菜美の下に、黒鴣瑠華(くろうるか)と名乗る美少女が現れた。眠り続ける美女。蠢く人面蒼。3つの時を刻む巨大な時計。謎が漂うクロック城に2人を誘う瑠華。そこに大きな鐘が鳴り響いたとき、首なし遺体が次々と現れた。驚愕のトリックが待つ、本格ミステリ。
「もしも、『クロック城』をブレイク前の習作だと思っている方がいたら、ぜひ本書を読んで勘違いに気づいていただきたい。(中略)シュアで美しい推理をたどり、ゴールに着いた時は、溜め息が出た。しごく素直な気持ちで、凄い、と思った。」――<有栖川有栖氏「解説」より>
(出版社HPより)

退廃的なのかと思いきや、意外と普通なキャラ揃いでした。南深騎(みき)とか黒鴣瑠華(くろうるか)など凝った名前だっただけに猶更。

深騎が探偵役かと思ったら、幼馴染の菜美でした。深騎って探偵社を経営しているんじゃなかったっけ?
しかも謎解きが根拠も証拠もないもので、「~だと思う」で延々と構築されるのはどうなのかと思います。

トリックは明かされてみればかの有名なアニメ映画を思い出し、イメージしやすかったです。

ですが、結末に至っては「え、これで終わり?」というあっさりとしたものでした。

結局<真夜中の鍵>は誰で、救世主なのか死神だったのか、なにもかもわからず仕舞いでモヤモヤ感だけが残りました。

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村上春樹さん「1Q84」 [本☆]


1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: 文庫



村上春樹さんの話題作です。やっと読めました。
天吾に書き直させたら半分の分量になったんじゃないでしょうか。

BOOK1〈4月‐6月〉前編
1Q84年―私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう。青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。…ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
BOOK1〈4月‐6月〉後編
ふかえりはきっと特別な存在なんだ、と天吾はあらためて思った。ほかの少女たちと比べることなんてできない。彼女は間違いなくおれにとって、何らかの意味を持っている。それなのにどうしてもそのメッセージを読み解くことができない。…『空気さなぎ』、宗教集団さきがけ、リトル・ピープル、そして夜空に浮かぶ月。謎に満ちた「1Q84年の世界」を生きる天吾と青豆の運命は―。
BOOK2〈7月‐9月〉前編
心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない―君たち二人の運命が、ただの成り行きによってここで邂逅したわけではない。君たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだ。この1Q84年に。…雷鳴とどろく夜、青豆はさきがけのリーダーから「秘密」を明かされる。天吾と父親の宿命的な再会、そして猫の町。二人が迷いこんだ世界の謎はまだ消えない。
BOOK2〈7月‐9月〉後編
青豆に言わなくてはならないことがいくつもあった。しかし今ここで天吾にできるのは、ただ名前を口にすることだけだ。青豆、と彼は呼びかけた。それから思い切って手を伸ばし、空気さなぎの中に横たわっている少女の手に触れた。…天吾と青豆、空に二つの月が浮かぶ1Q84年の世界で、二人はもう一度めぐり逢えるのか。深い森の中へ分け入るように、物語は続いて行く―。
1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉前編
青豆は「さきがけ」のリーダーが最後に口にした言葉を覚えている。「君は重い試練をくぐり抜けなくてはならない。それをくぐり抜けたとき、ものごとのあるべき姿を目にするはずだ」。彼は何かを知っていた。とても大事なことを。―暗闇の中でうごめく追跡者牛河、天吾が迷いこんだ海辺の「猫の町」、青豆が宿した小さき生命…1Q84年、混沌の世界を貫く謎は、はたして解かれるのか。
1Q84 BOOK3〈10月‐12月〉後編
その誰かは、そこにあるものが本当にあることを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。青豆、と天吾は思った。しかし声には出さなかった。彼はその手を記憶していた。―青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって…。
(「BOOK」データベースより)

スポーツインストラクターで裏稼業で暗殺者の顔を持つ青豆と、予備校講師を続けながら小説家を目指している天吾の純愛ストーリイです。それぞれがとあるカルト教団に関わることになり、「1984」の世界から移ってしまった並行世界の「1Q84」で互いを追い求めることになります。

主人公である青豆と天吾の章が交互に描かれます。BOOK3からはそこに牛河という二人を追う男の章が加わります。

ほぼ青豆と天吾(と牛河)の独白で進む物語は、青豆が行動に制限がかかっていることもあって転換点を見つけにくいほど、淡々と進みます。
天吾は「ふかえり」という少女の書いた『空気さなぎ』という小説を推敲するのですが、この物語も天吾に推敲させたら半分くらいになったのではないかと思います。

ファンタジーなんですが、「1Q84」と呼ばれる世界がなにを示唆するのかわかりませんでした。
まさか、青豆と天吾の純愛を描くためだけに存在するわけではないと思いますが。

ジョージ・オーウェルの小説『1984年』を意識しているのは確かでしょう。そこにカルト教団によるテロ事件が絡んでいるように思いますが、青豆と天吾の純愛というメインストーリイにこれらのサブストーリイとして絡める意図や成果というものが読み取れませんでした。

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北山猛邦さん「『瑠璃城』殺人事件」 [本☆]


『瑠璃城』殺人事件 (講談社文庫)

『瑠璃城』殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/03/14
  • メディア: 文庫



ミステリの体裁をとっているものの、ほとんどファンタジーです。

1989年、日本。1243年、フランス。1916年、ドイツ―時代と国を超えて繰り返される密室殺人。図書館で胸を貫かれた女性、城から忽然と消えた6人の騎士、戦地で消えた4人の遺体。それらに隠れた、ある男女の恋の運命。不可能犯罪も輪廻転生したのか?切ない思いと仰天トリックが全編彩る本格ミステリ。
(出版社HPより)

時間と場所を変えて密室殺人が行われます。
日本の「最果ての図書館」で室内で倒れている女性を助けるべく扉を開けると、短剣が胸に突き刺さっていました。
フランス「瑠璃城」では馬を使って1日かかる泉で騎士団が首なし死体で発見されます。しかし、門番は彼らが城を出ていくのを見ておらず、半日前に城内で目撃されていました。
フランスとドイツとの戦線で、塹壕に残されていた4体の首なし死体が僅かな時間で消失します。

何度生まれ変わっても殺しあう運命にある男女(記憶は引き継いでいる)が、その運命に終止符を打つべく抗う様子がよかったです。

各年代のトリックは「あー、確かに」と納得するものなんですが、生まれ変わりの設定に関しては理解
しづらいものがありました。
トリックに関しても大掛かりで、運任せなところもあり、すんなり納得まではいきませんでした。大胆で斬新ではありますが。

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