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梨木香歩さん「海うそ」 [本☆☆]


海うそ (岩波現代文庫)

海うそ (岩波現代文庫)

  • 作者: 梨木 香歩
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/04/18
  • メディア: 文庫



「喪失」と「癒し」を主題にした梨木さんらしい味わいのある作品です。

昭和の初め,南九州の離島(遅島)に,人文地理学の研究者,秋野が調査にやって来た.かつて修験道の霊山があった,山がちで,雪すら降るその島は,自然が豊かで変化に富み,彼は惹きつけられて行く.50年後,不思議な縁に導かれ,秋野は再び島を訪れる──.歩き続けること,見つめ続けることによってしか,姿を現さない真実がある.
(出版社HPより)

フィールドワークとして南九州の離島に秋野がやってきたところから始まり、文化人類学や民俗学のテイストがあります。

調査を進めるうちに島に残る平家の落ち武者伝説、廃仏毀釈で破壊された寺、僧侶と娘の悲恋の物語など記録のない事物が人々の記憶となってやがて風化していくさまが描かれます。
そこに秋野の身に降りかかった近しい人たち(許嫁、父母、指導教授)の死が重なります。

秋野の抱く喪失感に、日本が近代化を推し進めることによって失われた(破壊した)事柄がリンクします。
その破壊は終章でも続いていて、諦めにも似た悲しみを感じました。

梨木さんの描く島の自然の描写が素晴らしいです。
島の動植物の生命感と主人公の抱える喪失感との対比によってより生き生きとした南方の植物のダイナミックさを感じました。。
風景・光景がイメージできるとともに、独特な表現でどこか面白みも感じます。

ただ、梨木さんらしいファンタジー色はありません。

また、喪失感と向き合うまでいかず、あっさりした印象を覚えたのが残念と言えば残念です。

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