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高田郁さん「天の梯 みをつくし料理帖」 [本☆☆☆]


天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)

天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)

  • 作者: 高田 郁
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2014/08/09
  • メディア: 文庫



「みをつくし料理帖」シリーズ完結編です。「雲外蒼天」の名のままの結末に思わず涙が…。

「結び草―葛尽くし」「張出大関―親父泣かせ」「明日香風―心許り」「天の梯―恋し栗おこし」の4編が収録されています。

『食は、人の天なり』――医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。澪の心星は、揺らぐことなく頭上に瞬いていた。その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか!? 厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさとは!? 「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。
(出版社HPより)

いよいよ最終巻ということで、澪が数々の難題をどうクリアするのかが気になりました。
幼馴染みの野江の身請け代金4,000両をどう捻出するのか、つる屋の料理人はどうするのか。

以前に後書きで「結末は決まっている」と書かれていたのですが、そう来たか、と納得しました。いろいろな意見はあると思いますが、個人的にはそれぞれの登場人物たちが新しい一歩を踏み出す様子がしっかりと描かれていると思いました。

様々なオリジナル料理を生み出してきた澪ですが、創作面だけでなく、様々な岐路で助言や励ましの言葉をかけてくれた登場人物たちがいました。厳しい言葉も優しさも包容力のある態度もありました。
素晴らしいヒューマンドラマだと思いました。

いつか、澪と野江の二人のその後を読みたいです。

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藤井太洋さん「ビッグデータ・コネクト」 [本☆☆☆]


ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

  • 作者: 藤井 太洋
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 文庫



サイバー犯罪に絡んだ警察小説ですが、それ以上にサイバー犯罪の網羅っぷりやIT業界の内実が如実に描かれていて不謹慎ながら楽しんで読みました。

京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の捜査は進歩的市長の主導するプロジェクトの闇へと…。行政サービスの民間委託計画の陰に何が?ITを知りつくした著者が描くビッグデータの危機。新時代の警察小説。
(「BOOK」データベースより)

ネタ的にはやや古くなるんですが、IT業界最大手●●●データやポイントカードの●●ヤなどが簡単に想像できる仮名で出てきたり、「進歩的首長」の主導する市立図書館の事例などが出てくるのにニヤリとしてしまいます。

また、システム開発に絡むIT業界の泥沼っぷりと、SIerの無知・横暴さが如実に描かれています。
大規模システム開発になればなるほど、複雑になればなるほど(複雑にしているのはユーザとSIerなんですが)人海戦術の色を濃くしていくもので、「IT業界あるある」は笑えないものがありました。

物語が進むにつれて藤井さんのIT技術知識の深さに感銘しつつも、ディストピア小説の色合いを帯びてきていることに気付き、背筋がぞくっとしました。

情報システムが生活に密着している今、自分の身の回りで起きつつあることを知るにはお勧めです。
反面、SFらしいイマジネーション溢れる世界観を期待すると肩透かしをくらいます。

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川西蘭さん「セカンドウィンド3」 [本☆☆☆]


セカンドウィンド 3 (小学館文庫)

セカンドウィンド 3 (小学館文庫)

  • 作者: 川西 蘭
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



洋たちも高校三年生ですかー。いろんな意味で集大成に向かいつつあります。

三年生部員が引退し、主人公・溝口洋は、キャプテンとして南雲学院高校自転車部を率いる立場になった。
自転車部を取り巻く環境も変わった。予算が削減される中、スパルタンな新任コーチが就任。その指導への不満やインターハイ連覇を義務づけられたプレッシャーで、チーム内の不協和音が高まっていく。それは必然的にキャプテンである洋に大きな波濤となって押し寄せるのだった。
高校最後の夏、親友でライバルでもある岳との切磋琢磨で、洋はどう成長するのか。連覇は達成できるのか。そして多恵や茜への想いは・・・? 大人の世界への旅立ちを前に、もがく少年たち。かつてない大激走の闘いを経て、やがて洋や岳たちは卒業を迎え、それぞれの夢を実現するため、進路を選択する。
躍動するキャラクター群。激烈なレース描写。怒涛のスピード感。誰もがかつて経験した友情や恋心・・。自転車という乗り物への愛と、若者たちのすべてが正面から描きつくされた本格ロードレース小説の決定版。
早くも青春スポーツ小説の金字塔の呼び声高い名作シリーズ第3巻、堂々の文庫化。
(出版社HPより)

スポーツ小説であり、友情あり、ほのかな恋愛あり、成長小説でもあるシリーズは読み応え抜群です。

単に自転車競技に打ち込む高校生たちの日々を描いた作品ではないところに魅力を感じます。
もちろん、自転車競技の臨場感も魅力の一つですが、それ以外の日常の会話や振る舞いがしっかり描かれていることで登場人物たちの造形が深くなるように感じます。

クールに振る舞う洋と、彼を取り巻く岳たち自転車部員との友情、幼なじみの多恵やガールフレンドの茜との微妙な距離感。いつまでも見守っていたい気持ちにさせられます。

たぶん、南学卒業をもってシリーズが終わるんでしょうが、できれば何年か後の物語を描いてほしいと思います。

で、「4」はいつ出るんでしょう?

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畠中恵さん「ときぐすり」 [本☆☆☆]


ときぐすり (文春文庫)

ときぐすり (文春文庫)

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/07/10
  • メディア: 文庫



「まんまこと」シリーズ第4弾です。
なんだか惚れた腫れたの話ばかり。

「朝を覚えず」「たからづくし」「きんこんかん」「すこたん」「ともすぎ」「ときぐすり」の6編が収録されています。

女房のお寿ずと娘のお咲を亡くし、しばらくは魂が抜けたようだった麻之助。それでも町名主・高橋家の跡取りとして、もめごとの裁定の仕事はしなければなりません――。そして幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎の絶妙な(?)助けもあって、少しずつ麻之助は回復してゆくのでした……。「人が人を、大事だって思う気持ちにつけ込んで、下司なことをするんじゃねえよ」前作で悲劇に見舞われた麻之助が捨て身で啖呵を切る『朝を覚えず』、色男の清十郎がすべてを投げ出し、謎の失踪をとげる『たからづくし』、突然三人の娘から好意を寄せられて困惑する吉五郎を描く『きんこんかん』など、「まんまこと」シリーズ第四弾の本作には、傑作連作小説六編を収録。お寿ずの又従姉妹の子で、最近不思議なほどお寿ずと面差しがそっくりになってきた「おこ乃」の存在感が増しているのも本作の大きな魅力です!
(「BOOK」データベースより)

前作は妻のお寿ずが亡くなってしまうというショッキングな展開で終わりました。
当然ながら、喪失感に囚われている麻之助を見守る周囲の人たちのまなざしが温かいです。

幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎との掛け合いや友情の篤さも沁みます。
ただただしんみりではなく、おかしみややんちゃもあり、物語に動きがあって楽しさもあります。
人情ものとしても楽しめる作品になっています。

時間が心を癒やす、そんな思いが込められたタイトルでした。

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成田名璃子さん「東京すみっこごはん」 [本☆☆☆]


東京すみっこごはん (光文社文庫)

東京すみっこごはん (光文社文庫)

  • 作者: 成田 名璃子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/08/06
  • メディア: 文庫



初読みの作家さんです。書店でタイトルに惹かれて読んでみました。
グルメ小説ではなく、心温まる人情小説でした。

「いい味だしてる女の子」「婚活ハンバーグ」「団欒の肉じゃが」「アラ還おやじのパスタ」「楓のレシピノート」の5編が収められています。

商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒屋は、年齢も職業も異なる人々が集い、手作りの料理を共に食べる“共同台所”だった。イジメに悩む女子高生、婚活に励むOL、人生を見失ったタイ人、妻への秘密を抱えたアラ還。ワケありの人々が巻き起こすドラマを通して明らかになる“すみっこごはん”の秘密とは!? 美味しい家庭料理と人々の温かな交流が心をときほぐす連作小説!
(出版社HPより)

空家となった元小料理屋を舞台に、空家に集まった人たちがくじ引きで残されたレシピをもとに手料理を振舞います。
一話ごとに変わる語り手はそれぞれに問題を抱えています。

抱えた問題が現代的でシビアで重いとは感じますが、その分だけ物語の終わりにカタルシスを得ることができます。

最後の最後に空家と残されたレシピの謎が明らかになり、思わずじわっとなりました。

ほっこりする読後感です。

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川上和人さん「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」 [本☆☆☆]


鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

  • 作者: 川上 和人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



小説ではないのですが、なんとも人を食ったようなタイトルに惹かれて読んでみました。
鳥類学者にしておくにはもったいない(失礼)語り口が面白いです。

必要なのは一に体力、二に体力、三、四がなくて、五に体力?! 噴火する火山の溶岩、耳に飛び込む巨大蛾、襲い来るウツボと闘いながら、吸血カラスを発見したのになぜか意気消沈し、空飛ぶカタツムリに想いをはせ、増え続けるネズミ退治に悪戦苦闘する――アウトドア系「鳥類学者」の知られざる毎日は今日も命がけ! 爆笑必至。
(出版社HPより)

作者は小笠原諸島をフィールドワークとする鳥類生態学者です。
噴火したて(?)の西ノ島にも上陸したというからその筋(ってどの筋よ?)の第一人者なのかなと思います。

サブカルをたくさん混ぜ込んだ小ネタ満載、ユーモアたっぷりの文章は下手な作家さんより面白いです。

それだけでなく、キョロちゃんを題材にした分類学や外来生物による生態系の破壊問題、なにより驚くべき鳥の飛翔能力が紹介され、鳥学の入門書としての魅力も満載です。
身近にいる鳥たちですが、知らないことだらけだと気づきました。

惜しいのは、カラー写真付きでないことです。各章の初めにイラストがついているのですが、白黒。(アカガシラカラスバトを「美しい鳥」と紹介しておいて、イラストには「白黒バージョン」と補足説明が ^^;)
豪華版の出版を望みます。

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川端裕人さん「雲の王」 [本☆☆☆]


雲の王 (集英社文庫)

雲の王 (集英社文庫)

  • 作者: 川端 裕人
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: 文庫



気象という大自然を相手にした壮大なファンタジーです。夏に入道雲を見ながら読みたい作品です。(あいにく関東は雨続きですが)
川端さんならではの要素が満載です。

気象台に勤務する美晴は、十代の頃に事故で両親を亡くし、今は息子の楓大と二人暮らし。
行方知れずの兄からの手紙に導かれ、母子はある郷を訪れる。
そこで出会ったのは、天気と深く関わり、美晴の両親のことも知っているらしい郷の住人たち。
美晴たち一族には、不思議な能力があるらしい。
郷から戻った美晴は、ある研究プロジェクトに参加するが……。
一族がもつ能力とは? 彼らが担ってきた役割とは?
「空の一族」をめぐる壮大なサーガ、開幕!

ゲリラ豪雨やスーパー台風、爆弾低気圧といった破壊力のある気象現象が増えていると実感しているだけに、時期を得た作品ではないでしょうか。

人工的に雨を降らせるという科学技術は知っていましたが、台風被害を抑えるために上陸ルートに乗らないように「あえて」台風を発生させたりする研究が行われていることは知りませんでした。

気象という科学的知識や技術を物語の中に落とし込んで、わかりやすく表現するだけでなく、「気象を読む」ことができる一族を登場させることで物語に面白さが生まれるように思いました。
この辺りは川端さんの真骨頂ですね。

強大な自然に対して、ちっぽけな存在である人間が知恵と知識でどう乗り切るか、壮大な物語を堪能しました。

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山本兼一さん「花鳥の夢」 [本☆☆☆]


花鳥の夢 (文春文庫)

花鳥の夢 (文春文庫)

  • 作者: 山本 兼一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫



安倍龍太郎さんの『等伯』と比べて読んでみると面白いかもしれません。

天才絵師・狩野永徳の恍惚と不安。稀代の名作『洛中洛外図』を描き、時代を席巻した永徳。―あの男は、どうしておれを苛立たせるのか。長谷川等伯への嫉妬に身悶えしながら、画境の極みを目指す。絵師の業を極限まで描く、傑作長編。
(「BOOK」データベースより)

室町時代から始まり多くの門人を抱える狩野派の総帥という立場と、天才絵師として何事にも縛られずに筆を振るいたい衝動との間で苦悶する狩野永徳。
かたや能登から体一つで上京してきて、己の才能のままに躍動的な絵を描く長谷川等伯。
老舗の跡継ぎと、ベンチャー企業の創業者の対比のようだと思いました。

永徳の等伯に対する嫉妬は狩野一門をもって様々な因縁をつけ、嫌がらせに走らせることになるのですが、そこには等伯の妻に対する永徳の想いが隠れているという作者の創作が、永徳の人間らしさを浮かび上がらせているように思います。

それにしても永徳が傾注した作品が安土城や大坂城だったというのは、とても残念です。


安土城のシーンで『火天の城』の主人公の岡部又右衛門が登場します。カメオ出演?

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五十嵐貴久さん「南青山骨董通り探偵社」 [本☆☆☆]


南青山骨董通り探偵社 (光文社文庫)

南青山骨董通り探偵社 (光文社文庫)

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/03/12
  • メディア: 文庫



タイトルからして軽めの探偵ものかな、と思ったら意外とヘビーでした。

大手企業に就職したものの、うだつの上がらない日々に塞ぐ井上雅也。ある日、南青山骨董通り探偵社の社長・金城から突然話しかけられた。「探偵になる気はありませんか?」。雅也は訝しみながらも体験入社をするが、厄介な事件に関わることになり……。個性的なメンバーの活躍が、軽快なテンポと極上のサスペンスで繰り広げられる、ベストセラー作家の新シリーズ始動!
(出版社HPより)

一匹狼タイプが多い探偵ものでは珍しくバラエティに富んだ探偵たちが登場します。

テンポのいい展開と、五十嵐さんらしい軽妙なセリフでページが進むのですが、想像以上に重い展開と探偵たちの陰がしっかりと描かれています。

あっさりミスリードに引っ掛かりました。真犯人に社長と同様に「誰?」と思ってしまいました。まさに作者の思うつぼです(笑)

続編が楽しみです。

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北村薫さん「元気でいてよ、R2-D2。」 [本☆☆☆]


元気でいてよ、R2-D2。 (角川文庫)

元気でいてよ、R2-D2。 (角川文庫)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 文庫



久しぶりに北村さんの作品を手に取ってみたら…

「マスカット・グリーン」「腹中の恐怖」「微塵隠れのあっこちゃん」「三つ、惚れられ」「よいしょ、よいしょ」「元気でいてよ、R2-D2。」「さりさりさり」「ざくろ」「スイッチ」の9編が収められています。

気心のしれた女同士で飲むお酒は、自分を少し素直にしてくれる…そんな中、思い出すのは、取り返しのつかない色んなこと(「元気でいてよ、R2‐D2。」)。産休中の女性編集者の下に突然舞い込んだ、ある大物作家の原稿。彼女は育児に追われながらも、自ら本作りに乗り出すが…(「スイッチ」)。本人ですら気付かない本心がふと顔を出すとき、世界は崩れ出す。人の本質を巧みに描く、書き下ろしを含む9つの物語。
(「BOOK」データベースより)

あの穏やかな語り口で結末がダークなものだと怖さが倍増します。
悪意や無神経さから生まれる恐怖をさりげなく描かれると社会に出ていけないじゃないですか…。

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