So-net無料ブログ作成

三浦しをんさん「神去なあなあ夜話」 [本☆☆]


神去なあなあ夜話 (徳間文庫)

神去なあなあ夜話 (徳間文庫)

  • 作者: 三浦しをん
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2016/06/03
  • メディア: 文庫



神去なあなあ日常』の続編です。こちらは短編集です。

「神去村の起源」「神去村の恋愛事情」「神去村のおやかたさん」「神去村の事故、遭難」「神去村の失せもの探し」「神去村のクリスマス」「神去村はいつもなあなあ」の7編が収録されています。

三重県の山奥、神去村に放りこまれて一年が経った。最初はいやでたまらなかった田舎暮らしにも慣れ、いつのまにか林業にも夢中になっちゃった平野勇気、二十歳。村の起源にまつわる言い伝えや、村人たちの生活、かつて起こった事件、そしてそして、気になる直紀さんとの恋の行方などを、勇気がぐいぐい書き綴る。人気作『神去なあなあ日常』の後日譚。みんなたち、待たせたな!
(「BOOK」データベースより)

やはり最初のインパクトに比べると豪放さやハチャメチャさで物足りなさを感じます。
三浦さんの小説というだけでハードルが上がっているのもありますが。

ヨキの家に居候している勇気が、ヨキ宅に使われずに放置されていたパソコンに書き綴った文章という体裁をとっているので、親密感があります。
「パソコンなんて誰も使えないだろ」と思っていたらヨキの祖母の繁ばあちゃんにしっかりバレているシーンは、繁ばあちゃん恐るべし、でした。

また、『神去村のクリスマス』は一番面白かったです。
勇気の勤める会社の社長(親方)の小学生の一人息子がクリスマスに興味を持ったことから、クリスマスパーティーをやろう、というお話です。
とはいえ、山奥の神去村なので「それらしい」を突き抜けて「こんなもんじゃろ」というアイテムが続出します。
クリスマスツリーは山で伐ってきた松の木だし、なぜか獅子舞が踊り狂うし。

けれど、ハチャメチャな展開に持ち込みながらもしっかりと締めるところは流石三浦さんです。

勇気が一目ぼれした直紀との仲がなかなか進展しないのはやきもきしますが、ちょっとずつ距離が縮まっているので気長に見守りたいと思います。

お仕事小説や勇気の成長物語ではありませんが、続編も楽しみです。

nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

北森鴻さん、浅野里沙子さん「天鬼越」 [本☆☆]


天鬼越: 蓮丈那智フィールドファイルV (新潮文庫)

天鬼越: 蓮丈那智フィールドファイルV (新潮文庫)

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/03/27
  • メディア: 文庫



北森さんが亡くなり蓮丈那智シリーズも終わり(泣)…と思っていたら、関係者の皆さんのおかげで読むことができました。ありがとうございます。

北森さんによる作品「鬼無里」「奇偶論」と、北森さん原案による「天鬼越」他を浅野里沙子さんが書き継いだ短編集です。

「鬼無里」「奇偶論」「祀人形」「補堕落」「天鬼越」「偽蜃絵」の6編です。

鬼無里(きなさ)が、消える……。民俗学者・蓮丈那智(れんじょうなち)と助手の内藤三國(みくに)は差出人不明のメールを受け取り、かつて訪れたH村に思いを馳せる。5年前、鬼の面をつけ、家々を練り歩く神事の最中、殺人事件が起きたのだった。誘(いざな)われるようにふたたび向かった村では、ある女性が待っていた――。著者急逝から6年、残された2編と遺志を継いで書かれた4編を収録。歴史民俗ミステリ、堂々たる終幕!
(出版社HPより)

浅野さんにとっては難しい仕事だったと思いますが、蓮丈那智と助手の内藤三國のやりとりなど不自然さを感じませんでした。

フィールドワーク先で必ずといっていいほど巻き込まれる殺人事件もさることながら、民俗学的考察もある種のミステリ色を帯びていて、蓮丈と内藤ともう一人の助手の佐江由美子が繰り広げる議論も読み応えがあります。

殺人事件の解決の裏に見えてくる、古代から連綿と続く祭祀や奇祭が意味するものとの関係といった土着性も物語にうまく組み込まれているように思いました。
歴史民俗ミステリの醍醐味だと思います。

また、「万年助手」の内藤三國がしっかりと成長(?)してきたのも、それを蓮丈が認めているのも嬉しいできごとでした。

恐らく、本当に最後の物語を堪能しました。
ありがとうございました。

nice!(10)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

石持浅海さん「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 [本☆☆]


わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/03/11
  • メディア: 文庫



碓井優佳シリーズ第4作です。

「赤信号」「夏休み」「彼女の朝」「握られた手」「夢に向かって」「災い転じて」「優佳と、わたしの未来」の7編が収録されています。

横浜にある女子高に通うわたし、上杉小春には碓氷優佳という自慢の親友がいる。美しく聡明な彼女はいつも、日常の謎に隠された真実を見出し、そっと教えてくれた。赤信号のジンクス、危険な初恋、委員長の飲酒癖、跡継ぎ娘の禁じられた夢、受験直前の怪我、密かな失恋…。教室では少女たちの秘密が生まれては消えてゆく。名探偵誕生の瞬間を描く青春ミステリーの傑作。
(「BOOK」データベースより)

過去3作が殺人犯の視線から語られる倒叙ミステリだったと違って、学生時代の優佳が謎を解く「日常の謎」系ミステリです。

表面上の謎解きだけに留まらず、奥底まで見通す鋭すぎる頭脳は恐怖ですね。
面と向かい合っただけで全てを見透かされそうです。御免蒙りたい。

ただ、優佳の親友だった小春が最後に行き着いたのと同じ理由で作品に魅力を感じませんでした。

nice!(15)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

北山猛邦さん「つめたい転校生」 [本☆☆]


つめたい転校生 (角川文庫)

つめたい転校生 (角川文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 文庫



ミステリ色はさほどでもないです。むしろ設定の妙を楽しむファンタジーのような気がします。

「かわいい狙撃手」「つめたい転校生」「うるさい双子」「いとしいくねくね」「はかない薔薇」「ちいさいピアニスト」の6編が収められています。

何もかも理想通りで、身悶えするほどキュートな彼。あるとき彼が殺し屋なんじゃないかと不安になり…(「かわいい狙撃手」)。ある初冬の日、クラスメイトが見守る倉庫から、転校生が忽然と消えた。彼女は幽霊?(「つめたい転校生」)。寂しい少年時代に出会ったたったひとりの友達は、人を殺す妖怪?(「いとしいくねくね」)など、人と人でないものとの切ない恋をめぐる、驚きのトリックが冴えるミステリー短編集。
(「BOOK」データベースより)

単行本のタイトルは『人外境ロマンス』だったそうで、作品の内容はよりこのタイトルに近いと思います。
人と「人外」の恋愛要素の強い作品で、さて「人外」とは?がミステリ要素となっています。

ファンタジー要素に隠された謎解き、こういうミステリもありかなと思います。

思わず和んでしまう結末が多かったです。

nice!(10)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

伊坂幸太郎さん「ガソリン生活」 [本☆☆]


ガソリン生活 (朝日文庫)

ガソリン生活 (朝日文庫)

  • 作者: 伊坂幸太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/03/07
  • メディア: 文庫



まさかの「車」が主人公の小説です。
おかしさ満載です。

実のところ、日々、車同士は排出ガスの届く距離で会話している。本作語り手デミオの持ち主・望月家は、母兄姉弟の四人家族(ただし一番大人なのは弟)。兄・良夫がある女性を愛車デミオに乗せた日から物語は始まる。強面の芸能記者。不倫の噂。脅迫と、いじめの影―?大小の謎に、仲良し望月ファミリーは巻き込まれて、さあ大変。凸凹コンビの望月兄弟が巻き込まれたのは元女優とパパラッチの追走事故でした―。謎がひしめく会心の長編ミステリーにして幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。
(「BOOK」データベースより)

ストーリイそのものはありきたりですが、車同士が話している世界というのが面白いです。
車種によってキャラが違うというのも納得感があって楽しめます。
車輪の数が多いほど知性が高いと車たちは考えていて、電車に畏敬の念を覚えているとか、自転車とはそもそもコミュニケーションがとれないという設定も面白かったです。

また、人間の会話はわかるんですが、車から話しかけたり意思表示ができないという制約がもどかしいです。ワイパーで否定とかしてほしい。

ミステリよりも設定で楽しんでしまいました。


文庫版カバー裏に掌編「ガソリンスタンド」が! なんかお得感があります。

nice!(14)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

初野晴さん「向こう側の遊園」 [本☆☆]


向こう側の遊園 (講談社文庫)

向こう側の遊園 (講談社文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 文庫



ファンタジー色の強いミステリです。なかなかに重いです。

「カマラとアマラの丘-ゴールデンレトリーバー-」「ブクウスとツォノクワの丘-ビッグフット-」「シレネッタの丘-天才インコ-」「ヴァルキューリの丘-黒い未亡人とクマネズミ-」「星々の審判」の5編が収録されています。

そこは、ひとが愛を葬る墓地だった。
花々が咲き乱れる廃園となった遊園地。そこには、謎めいた青年が守る秘密の動物霊園があるという。「自分が一番大切にしているものを差し出せば、ペットを葬ってくれる」との噂を聞いて訪れる人々。せめて最期の言葉を交わせたら……。ひとと動物との切ない愛を紡いだミステリー。
(出版社HPより)

舞台設定が幻想的で、ファンタジーっぽくあるのですが、リアルな寓話作品だと思います。
ミステリ色は薄めな気がします。

人と動物の関わり、人間に弄ばれる動物の悲劇と痛み、人間の犯した罪を考えさせられました。

重い物語でしたが、魅力的で読み応えのある小説でした。

nice!(12)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

飛鳥井千砂さん「チョコレートの町」 [本☆☆]


チョコレートの町 (双葉文庫)

チョコレートの町 (双葉文庫)

  • 作者: 飛鳥井 千砂
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/07/11
  • メディア: 文庫



飛鳥井さん、初読みです。

不動産会社の支店で店長の遼は、故郷にある店舗に一時的に赴任することとなった。シャッターの下りた商店街、傍若無人な昔の同級生、どこか馴染めない家族…。一刻も早く元の店に戻りたい遼だが、友人の結婚問題や、父親の退職などを経て、徐々に気持ちが変わってゆく。―俺、ここに帰ってきたいのか?「故郷」を持つすべての人の胸に、チクリとした痛みと温かな想いを呼び起こす物語。
(「BOOK」データベースより)

タイトルだけではどんなストーリイなのかわからなかったのですが、なるほど、故郷にチョコレート工場がある町なんですね。
そんなにチョコレートの匂いがするんでしょうか。想像つきません。

残念ながら故郷を持たない人間なので、「故郷に帰る」ということがピンとこなかったのですが、主人公の遼の気持ちの移り変わりというものが手に取るようにわかりました。

家族や友人との関係から逃れたくて都会に出た遼が、「外部の視点」でもって故郷を眺め、触れ合うことで再認識をしていく。
それは終幕で遼が、「東京に『帰る』」と言わなかったことに少しの変化が見られたと思います。

中盤から物語の展開がうっすら見えてきたのが残念でした。

nice!(8)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

柴崎友香さん「ドリーマーズ」 [本☆☆]


ドリーマーズ (講談社文庫)

ドリーマーズ (講談社文庫)

  • 作者: 柴崎 友香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 文庫



柴崎さんらしい、なにげない日常を独特の視点と表現で切り取った連作短編集です。

「ハイポジション」「クラップ・ユア・ハンズ!」「夢見がち」「束の間」「寝ても覚めても」「ドリーマーズ」の6編が収められています。

目の前にある風景に紛れ込む夢の時間。
わたしは、自分が死んでいることに気づいていない父の夢を見た。
著者の魅力がギュッと詰まった連作短篇集
父の一周忌のために故郷の街に暮らす妹夫婦を訪ねた「わたし」は、眠りに引き込まれて、自分が死んだことに気づいていない父を夢に見る――。日常でふいに感じる思いのはかなさは、夢を思い出すときのもどかしさに似ている。夢も現(うつつ)もない交ぜになった目の前にある世界のかけがえのなさを描いた連作短篇集。
(出版社HPより)

夢をモチーフにしている短編集は、浮遊感と地に足がついている感覚があったり、夢とうつつの狭間の膜のような感覚があったりするのですが、登場人物はしっかり現実的で、そのギャップが面白いと思いました。

読者とはげんきんなもので、男女や親子の心の機微といった深い交わりを読んでみたくなります。特に表題作。

nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

石持浅海さん「届け物はまだ手の中に」 [本☆☆]


届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/10/08
  • メディア: 文庫



石持さんに完全にやられました。こちらの浅い読みをはるかに超える結末でした。

楡井和樹は恩人・益子の仇である江藤を殺した。
しかし、まだ終わっていない。
裏切り者であるかつての親友・設楽宏一にこの事実を突きつけなければ、復讐は完結しないのだ。
設楽邸に向かった楡井は、設楽の妻、妹、秘書という3人の美女に迎えられる。
息子の誕生パーティーだというのに、設楽は急な仕事で書斎にいるという。
歓待される楡井だが、肝心の設楽はいつまで経っても姿を見せない。
書斎で何が起こっているのか――。
(出版社HPより)

石持さんらしい、特異な状況下での腹の探り合いと騙し合い、そして推理のための論理の構築が展開されます。

設楽の妻、妹の真澄、秘書の遠野の3人による連係プレーに「設楽、もうこの世にいないのでは」と思わせる展開に騙され、完全に方向違いのことばかり考えていました。

しかし、「届け物」はなかなかグロいです。女性陣はよく失神しなかったよなぁ。

nice!(14)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

北山猛邦さん「猫柳十一弦の後悔 ~不可能犯罪定数」 [本☆☆]


猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫



設定の面白さ、会話のユルさ、密室トリックが楽しめるミステリです。

大学の探偵助手学部に通う君橋と月々は、志望のゼミに落ち、悪ふざけで出した第3希望の猫柳ゼミ行きが決定してしまう。指導教官は、功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦(25歳)。ショックを受ける二人だったが、名門ゼミとの合同合宿が決まり、勇んで向かった孤島で、本物の殺人事件に遭遇する!
(出版社HPより)

最近の大学は思わず「なにやるの?」と思ってしまうような名前の学部が多いですが、さすがに「探偵助手」学部はないでしょう。4年かけてなにを学ぶのかカリキュラムを見てみたいです。

主人公が君橋君人(あだ名はクンクン)と、友人の月々守(警備サービスみたいだ)というふざけたネーミングの落ちこぼれ学生です。
大学2年次のゼミで聞いたこともない探偵・猫柳十一弦のゼミに振り分けられてしまうところから始まります。

ゆるーい導入部からユーモア・ミステリかと思っていたら、名探偵の誉れ高い雪ノ下樹率いるゼミと合同合宿をするということでゼミ生が所有する孤島で連続殺人が発生。「閉ざされた山荘」系でした。

トリックも謎解きも「なるほどー」と思わせるものでしたし、なにより猫柳十一弦の「これ以上被害者を出さない」スタンスと犯人との駆け引きが目新しかったです。

とりわけラストシーンがよかったです。
続編も読んでみたいと思います。

nice!(15)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: