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畠中恵さん「たぶんねこ」 [本☆☆]


たぶんねこ (新潮文庫)

たぶんねこ (新潮文庫)

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫



シリーズ12作目ですか。そんなに!?

「跡取り三人」「こいさがし」「くたびれ砂糖」「みどりのたま」「たぶんねこ」の5編が収録されています。

えっ、若だんなが大店の跡取り息子たちと稼ぎの競い合いをすることになったってぇ!? 長崎屋には超不器用な女の子が花嫁修業に来るし、幼なじみの栄吉が奉公する安野屋は生意気な新入りの小僧のおかげで大騒ぎ。おまけに幽霊が猫に化けて……。てんやわんやの第十二弾の鍵を握るのは、荼枳尼天様と「神の庭」!
(出版社HPより)

一時期マンネリを感じていたのですが、ここにきて盛り返してきたように思います。
若だんなが寝込む頻度が減ってきたのか、長崎屋の外に出て、物語の動きが大きくなった印象があります。

外に出る機会が増えた分だけ癖のある人間や傍若無人な小僧も登場し、物語が面白くなりました。
それに対応できる若だんなも大人になったなー、と感慨深いものがありました。

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柴崎友香さん「春の庭」 [本☆☆]


春の庭 (文春文庫)

春の庭 (文春文庫)

  • 作者: 柴崎 友香
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/04/07
  • メディア: 文庫



らしいといえばらしいです。
が、「これが芥川賞作品かぁ」という印象も受けます。

「春の庭」「糸」「見えない」「出かける準備」の4編が収められています。

第151回芥川賞受賞作。「春の庭」
書下ろし&単行本未収録短篇を加え 待望の文庫化!
東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは――第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。
二階のベランダから女が頭を突き出し、なにかを見ている。(「春の庭」)
通りの向こうに住む女を、男が殺しに来た。(「糸」)
アパート二階、右端の部屋の住人は、眠ることがなによりの楽しみだった。(「見えない」)
電車が鉄橋を渡るときの音が、背中から響いてきた。(「出かける準備」)
何かが始まる気配。見えなかったものが見えてくる。
(出版社HPより)

芥川賞受賞作ということで興味を持って読んだ人はその日常性にあふれた(というより日常そのものの)ストーリイに戸惑ったかもしれません。
それが柴崎さんの小説の特徴でもあるのですが。

ただ、デビュー作から読んでいると、これらの作品に、なんというか、キラキラしたものを感じられませんでした。
20代の若い男女を描いた作品だと、とりたてて目標もない(ダラダラした)日常であっても、彼らの関西弁の会話の効果もあって、自分がその場にいるような楽しい(でもワクワクほどではない)気分になりました。

それがこの作品では、ただルーティン・ワークとしてその日を送っている、そんな印象を受けました。
登場人物たちの年齢のせいなのか、惰性で暮らしている日々が描かれているのは、読んでいてツライな、と思いました。

住居を変えたり、生活環境を変えたりというシーンもあるにはあるのですが、ブレイクスルーとまではいかないように思え、閉塞感が拭えませんでした。
その先にある「はっきりとした光」を(眩しいものでなくても)見せてほしいと思いました。

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吉田篤弘さん「水晶萬年筆」 [本☆☆]


水晶萬年筆 (中公文庫)

水晶萬年筆 (中公文庫)

  • 作者: 吉田 篤弘
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/07/23
  • メディア: 文庫



不思議な味わいの短編集です。ハマる人はどっぷりいっちゃいそうです。

「雨を聴いた家」「水晶萬年筆」「ティファニーまで」「黒砂糖」「アシャとピストル」「ルパンの片眼鏡」の6編が収録されています。

アルファベットのSと「水読み」に導かれ、物語を探す物書き。影を描く画家。繁茂する導草に迷い込んだ師匠と助手。月夜に種蒔く人。買えないものを売るアシャ。もう何も欲しくない隠居のルパン―人々がすれ違う十字路で、物語がはじまる。流れる水のように静かにきらめく六篇の物語集。
(「BOOK」データベースより)

白山、築地、根津、千住といった場所をモチーフに架空の「十字路のある」街を構築しています。
その迷路感がたまりません。
個人的にあちこちの街で路地裏に入り込んで、道に迷って迷子になって、思いがけない発見を経験しているだけに楽しく読みました。(そういえば、最近迷子になってないなー)

土地鑑のある場所ばかりなので、デジャヴもあり、不思議な設定に異世界に迷い込んだ印象もありました。

リドルストーリーという形式なのかな?結末まで書かれていなく、読者の想像をかき立てるラストが好きです。

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大崎梢さん「ふたつめの庭」 [本☆☆]


ふたつめの庭 (新潮文庫)

ふたつめの庭 (新潮文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/10/28
  • メディア: 文庫



保育園を舞台にした連作ミステリです。
が、保育園を舞台にした謎解きかと思いきや、恋愛要素のほうが強かったです。

「絵本の時間」「あの日の場所へ」「海辺のひよこ」「日曜日の童話」「青い星の夜」「発熱の午後」「青空に広がる」の7編が収録されています。

保育園に〈平穏な一日〉なんてありません! 25歳の保育士・美南(みなみ)は、次々と起きる不思議な事件にふりまわされる日々。妻と娘が姿を消したと園児の父親が駆け込んできたり、園内に不審な足跡を見つけたり。解決のヒントは、えっ、絵本のなか!? 謎を解くべく奔走するうち、男手ひとつで園児・旬太(しゅんた)を育てる隆平に心惹かれて……。大人も子どもも一緒に大きくなる、恋と謎と成長の物語。
(出版社HPより)

湘南モノレールの西鎌倉駅近辺にある保育園が舞台です。

さらっと読めます。

保育士の美南とシングルファーザーの隆平が次第に惹かれあっていく恋愛ものです。まあ、初めからなんとなく想像はつきました。保育士とシングルファーザー…って安直?と思いながら。

けれども、じっくりと気持ちを育みつつも、子ども(旬太)のことを気に掛ける細やかさがよかったです。

絵本が鍵となって謎が解かれるのは楽しかったです。

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有川浩さん「ヒア・カムズ・ザ・サン」 [本☆☆]


ヒア・カムズ・ザ・サン (講談社文庫)

ヒア・カムズ・ザ・サン (講談社文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/11/13
  • メディア: 文庫



ひとつの設定から複数の物語を作る。たまにありますが、本作はその距離が近すぎるようにおもいました。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」「ヒア・カムズ・ザ・サンParallel」の2編が収められています。

真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた…。わずか7行のあらすじから誕生した二つの小説。大切な人への想いが、時間と距離を超え、人と人とを繋げていく。有川浩meets演劇集団キャラメルボックス。小説×演劇の全く新しいクロスオーバーから生まれた物語の光。
(「BOOK」データベースより)

モノに触れることでその持ち主の記憶が見えるという特殊能力を持つ主人公、妻子を捨ててアメリカに渡り脚本家として成功を収めて凱旋帰国した同僚の父親という二人を軸に物語が進むのですが、父親の過去と秘めた意思にバリエーションを持たせることで別々のストーリイが生まれます。

個人的には表題作のほうが好みでした。
端正な表題作に比べると「ヒア・カムズ・ザ・サンParallel」は軽い感じがします。

じんとする家族愛を描いてほしかった、と思いました。

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朱川湊人さん「満月ケチャップライス」 [本☆☆]


満月ケチャップライス (講談社文庫)

満月ケチャップライス (講談社文庫)

  • 作者: 朱川 湊人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫



NHK BSドラマ「本棚食堂」で料理の題材になっていたので、読んでみました。
それ以外の料理も簡単でおいしそうでした。

兄妹と母さんが暮らす家に料理上手のモヒカン男がやってきた。繰り出すメニューは、男同士のムニエルにブロッコリーのウソピザ、満月ケチャップライス。家族の仲間入りのお礼にスプーン曲げの超能力まで授けてくれた。その超能力を狙う怪しい宗教団体が周囲をうろつき出し…。忘れられない「家族」の物語。
(「BOOK」データベースより)

どこに行くのかわからないけれど、なんだかほっこりする展開に浸っていたら、予想もしない方向(それも個人的に好ましくない)に流れていきました。

謎の宗教団体を実在の団体(オウム)と酷似させることの意味はなんだったんでしょう?現実はそこまで物語を受け入れるほど昇華されていないように感じます。
このために物語世界に違和感を覚えました。

前半と後半でガラッと変わってしまった物語が残念です。

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樋口有介さん「猿の悲しみ」 [本☆☆]


猿の悲しみ (中公文庫)

猿の悲しみ (中公文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/07/23
  • メディア: 文庫



女性を主人公にしたハードボイルドです。
文体が柚木草平シリーズと同じ、というか樋口節なのでずっと既視感がありました。

弁護士事務所で働く風町サエは、殺人罪で服役経験を持つシングルマザー。十六歳で不登校の息子がいる。表向きは事務員だが、実際には様々な手口で依頼主の要望に応える調査員。プロ野球選手とモデルの離婚慰謝料を巡り動くサエだったが、同時にある殺害事件についての調査も言い渡される。歪んだ愛の発端は三十四年前に遡り―。
(「BOOK」データベースより)

解説にあるように、女性が主人公である必然はわかりました。けれど、主人公の心情なりにもう少し突っ込んでもいいような気がしました。

事件の「解決」ではなく「結末」を迎えるというところがハードボイルドらしいかな、と思います。

柚木草平シリーズのキャラクターがカメオ出演しています。もちろん、草平本人も!(「ミミズの研究者」も)

続編『笑う少年』も楽しみです。

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朱川湊人さん「サクラ秘密基地」 [本☆☆]


サクラ秘密基地 (文春文庫)

サクラ秘密基地 (文春文庫)

  • 作者: 朱川 湊人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/09/02
  • メディア: 文庫



写真にまつわる短編集です。自分の子ども時代よりも昔なのかな。

「サクラ秘密基地」「飛行物体ルルー」「コスモス書簡」「黄昏アルバム」「月光シスターズ」「スズメ鈴松」の6話が収録されています。

〝直木賞受賞作〟『花まんま』や、〝涙腺崩壊〟のキャッチフレーズ『かたみ歌』で、読者の涙を誘った短編の名手・朱川湊人が、家族と写真にまつわるちょっぴり不思議で哀しいお話をお贈りします。二〇一二年秋に、三十九年の長期連載が幕を閉じたミステリ界の巨人・佐野洋氏の連載「推理日記」で、設定の妙を大絶賛された、UFOをでっち上げた同級生の美人の女の子の身の上話「飛行物体ルルー」、とある事故をきっかけにして、優しかった近所のおねえさんの意外な一面を見てしまった少年の淡い慕情の顚末「コスモス書簡」、ぶっきらぼうで、口より手が先に出る不器用な父と、その父に寄り添うように暮らす聡い男の子、そして同じボロアパートに、とある事情で身を隠すように暮らすことになった〝私〟との心の交流を描いた「スズメ鈴松」、ほのかな想いを寄せながら亡くなった同級生の想いが、不思議なカメラに乗り移ってもたらされた写真にまつわる奇妙な出来事「黄昏アルバム」、小学生の男子四人でつくった秘密基地にまつわる哀しい過去を巡る表題作「サクラ秘密基地」など、夕焼けを見るような郷愁と、乾いた心に切ない涙を誘う、短編を六本を収録。
(出版社HPより)

バラエティに富んだ筋書きで、ただの懐古趣味ではなく、現実の重さも描かれているのですが、なんとなく「いい話」止まりな印象が残りました。

ノスタルジックさは朱川さんの作品の特徴ではあるのですが、郷愁を感じなければ共感するのは難しいのかな。

面白く読んだのですが、強く印象に残ったとまではいきませんでした。

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石持浅海さん「煽動者」 [本☆☆]


煽動者 (実業之日本社文庫)

煽動者 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2015/08/01
  • メディア: 文庫



この表紙はどうだろう。ローマ字で「sendosya」って…。

テロ組織内部で殺人事件が起きた。この組織のメンバーは、平日は一般人を装い、週末だけ作戦を実行。互いの本名も素性も秘密だ。外部からの侵入が不可能な、軽井沢の施設に招集された八人のメンバー。発生した殺人の犯人は誰か?テロ組織ゆえ警察は呼べない。週明けには一般人に戻らなければならない刻限下、犯人探求の頭脳戦が始まった―。閉鎖状況本格ミステリー!
(「BOOK」データベースより)

『攪乱者』の続編というか、シリーズものです。共通して登場するのは「串本」だけです。かといって串本が探偵役というわけではなく、推理を導くための「先導者」の位置づけです。

石持さん得意のクローズドサークルものです。高セキュリティのテロリストたちの拠点で起こった殺人事件。当然、警察は呼べません。警察による科学捜査は期待できないから、論理だけで犯人を推理するというストーリイ展開です。

動機については「ちょっと…」と思います。「狂信者の犯罪」だとなんでもありになってしまうし。

組織(V)の正体が明らかに。納得の落としどころではありますが、続編があるとすると正体不明の組織についての興味という点でハンデになりそうです。

ラストで育恵が発するセリフは思わずニヤリとさせられるものでした。

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大倉崇裕さん「オチケン探偵の事件簿」 [本☆☆]


オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 文庫



前作の『オチケン!』『オチケン、ピンチ!!』を読んでいませんでした。
しかし、大倉さんはいろんなことに造詣が深いですね。

「幻の男」「高田馬場」の2編が収録されています。

究極の巻き込まれ型でお人好し探偵が、キャンパスで起こる奇怪な事件の数々に挑む。事件を解く鍵は落語にアリ?
大学入学早々、落語にまったく興味がないのに、廃部寸前のオチケン(落語研究会)に入部させられた越智健一(おちけんいち)。風変わりな二人の先輩にふりまわされ、キャンパス内で起きる奇妙な事件の捜査に駆り出され、必修科目の出席もままならない中、大学は夏季休暇に突入していた。宿題をきっちり仕上げ、前期のリベンジを誓う越智だが、学生落語選手権で優勝を狙う大学間の抗争に巻き込まれ、次々と予想だにしない事件に直面するはめに……。単位取得が遠のいていく、オチケン探偵の活躍を描く連作ミステリー。オチケンの運命や、いかに!?
(出版社HPより)

新入生が変人の先輩に振り回される学園ものが多いのはなぜなんでしょう?
「先輩には逆らえない」という抑圧的なムチャ振りに翻弄される姿がコメディタッチになるんでしょうか。

謎解きが物語中に披露される落語の内容と絡んでくるというのは面白い趣向です。

1作目、2作目を読まねば。

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