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石持浅海さん「フライ・バイ・ワイヤ」 [本☆☆]


フライ・バイ・ワイヤ (創元推理文庫)

フライ・バイ・ワイヤ (創元推理文庫)




近未来学園恋愛ミステリです。いろいろ盛りすぎ[わーい(嬉しい顔)]

隆也のクラスの転入生は、二足歩行のロボットだった! これは病気の少女をロボットを通じて通学させる実験だという。奇妙な転入生にも慣れてきたある放課後、校内で級友が撲殺され、彼女(ロボット)の背中が被害者の血で染まっているのが発見される。殺害の動機は? ロボットと事件の関わりは?! 友人の死に直面した隆也たちを新たな事件が襲う。近未来を舞台にした青春本格ミステリ。
(出版社HPより)

警察の科学捜査の及ばない状況下で、「頭の切れる」登場人物たちが論理だけを積み上げて事件解決につなげるという形のミステリが多い石持さんですが、それを逆手に取ったような作品です。今回は「そういう」登場人物は少ないのですけれど。

犯人と被害者だけしかわかり得ない(という)動機によって起こった殺人事件というのは、裏を返せば警察はそれ以外の要素で犯人逮捕にたどり着くのではないかと思うわけで、近未来の話なのに警察の科学捜査が全く進化していないように感じるのはなぜだろう(笑い)。

だんだんと高まっていく恋愛の要素は、なんだかとってつけたようでした。

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東野圭吾さん「禁断の魔術」 [本☆☆]


禁断の魔術 (文春文庫)

禁断の魔術 (文春文庫)




ガリレオシリーズ第8弾です。
短編で発表した作品を長編化したものです。たまにありますよね、このパターン。

高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!
(「BOOK」データベースより)

ストーリイはシンプルです。シンプルゆえに物足りなさを感じました。

科学技術を使ったトリックにも意外性を感じませんでした。やはり初期のシリーズのような斬新さは期待できないんでしょうか。

東野さんの書きたいものが人間ドラマに移っているためであれば、仕方ないですね。
しかし、『容疑者Xの献身』ほどの感動もなく、ぼやっとした読後感でした。


それにしても、レールガンを実用化してしまう米軍って、やっぱすごいわ。

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渡来ななみさん「天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜」 [本☆☆]


天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜 (メディアワークス文庫)

天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜 (メディアワークス文庫)




タイトルの「。」って必要?

ぼくは明日、昨日のきみとデートする』つながりで読んでみました。
個人的には『ぼくは明日~』のほうが好みです。

天文学者の父親とともに遠く南国の孤島に暮らしている少女・海良。ある日、彼女が闇夜の草原で出会ったのは、星空から降りたった不思議な少年・τ(タウ)だった。
「僕という天体は、宇宙を未来から過去へと進んでいる。でもこの姿を浮かべていられるのは、ほんの七日間だけ。だから今夜は僕にとって、君との最後の夜なんだよ――」
果たしてその謎めいた言葉の通りに、海良は毎夜、タウと出会い続ける。約束された最初の出会いの、避けられない最後のお別れの時へ向けて――。
時を遡る少年とすれ違い続ける少女が織りなす、たった七夜のラブストーリー。
(出版社HPより)

途中でタネが明かされるのですが、分っていても時間が経つにつれてすれ違っていく想いに対する切なさが沁みます。

ラブストーリイであるととに、主人公の海良の成長物語でもあります。

ただ、設定が中学生だから仕方ないのかもしれませんが、主人公の地の文が幼くて読み進めるのに抵抗がありました。

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海堂尊さん「玉村警部補の災難」 [本☆☆]

今年もゆるゆると好きなことを綴っていこうと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。





「バチスタ」シリーズのスピンオフ作品です。
「デジタルハウンドドッグ(電子猟犬)」の異名を持つ加納警視正と、その相棒である玉村警部補が事件に挑む短編集です。

「バチスタ」シリーズでおなじみ加納警視正&玉村警部補が活躍する珠玉のミステリー短編集、ついに文庫化!出張で桜宮市から東京にやってきた田口医師。厚生労働省の技官・白鳥と呑んだ帰り道、二人は身元不明の死体を発見し、白鳥が謎の行動に出る。検視体制の盲点をついた「東京都二十三区内外殺人事件」、DNA鑑定を逆手にとった犯罪「四兆七千億分の一の憂鬱」など四編を収録。
(「BOOK」データベースより)

「バチスタ」シリーズ本編でもお馴染みの二人ですが、加納警視正の傍若無人な捜査に巻き込まれる玉村警部補の災難っぷりが面白いです。

DNA鑑定や歯型といった「絶対」と思い込んでいる技術の盲点をついたトリックもしっかりとミステリしてます。

それでいてAi(オートプシー・イメージング)の提唱も抜かりなく潜り込ませているところは流石。


「東京都二十三区内外殺人事件」では田口&白鳥コンビも登場します。
しかし、道一本ずれただけで扱いがこうも変わるとは…。

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七月隆文さん「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」 [本☆☆]





映画化されるということで読んでみました。我ながらミーハーだなあ。
SF的要素を絡めた純愛ものです。なにも考えずに物語に浸れます。(考えちゃいけない)

京都の美大に通うぼくが一目惚れした女の子。高嶺の花に見えた彼女に意を決して声をかけ、交際にこぎつけた。気配り上手でさびしがりやな彼女には、ぼくが想像もできなかった大きな秘密が隠されていて―。「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説。彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。
(「BOOK」データベース)

京都の叡山鉄道沿線や三条付近を舞台にしているので、聖地巡礼にもうってつけですね。

前半でカラクリが見えてしまいました。カラクリが見えるとともに結末も見えてしまいました。
個人的にはもうひとひねりあってもよかったと思います。まあ、あくまで「ツール」としてのカラクリであるなら必要もないのかもしれません。

恋愛ものとして浸れればいいのかもしれません。

細かいところで「~的な」という言い回しや「ポニテ」という短縮語が読んでいて引っかかりました。


う~む、キャストがイメージと違う…。
http://www.bokuasu-movie.com/

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米澤穂信さん「リカーシブル」 [本☆☆]


リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)




地方都市の伝承とミステリが融合した作品でした。
ただ、ちょっと重いなー。

越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ……。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。十代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。
(出版社HPより)

「タマナヒメ」という伝承が現代にも根付く街を舞台にした物語はなかなか興味深かったです。
ただ、逆に市街地(シャッター通りと化した商店街があるということはそこそこな規模の街だろう)で活きている伝承などあるのだろうか、という疑問もありました。

地方都市、地域の伝承、閉鎖された社会、と舞台設定が似ていて、ついつい大崎梢さんの作品と比べてしまいました。

中学生にして息苦しいまでにクラス内ヒエラルキーを気にするハルカというのは現実としてあるんでしょうか。朝井リョウさんの作品では高校生スクールカーストが描かれてはいましたが、更に進んでいる?

また、次第に明らかになっていく母親や弟との関係性や、ハルカの抱える孤独感・疎外感といったものが彼女の行動によってのみ露わになっていく描写は読んでいて痛みを感じました。

それだけに、壊しようのない地域性や排他性、閉鎖性の息苦しさとは反対に、ハルカの苦痛や抑え込んだ悲しみや怒りがやがてしなやかな強靭さに変わっていくラストが救いに思えました。

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東川篤哉さん「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」 [本☆☆]


魔法使いは完全犯罪の夢を見るか? (文春文庫)

魔法使いは完全犯罪の夢を見るか? (文春文庫)




新シリーズです。
やっぱり、キャラが立っているとユーモアミステリは面白いですね。

「魔法使いとさかさまの部屋」「魔法使いと失くしたボタン」「魔法使いと二つの署名」「魔法使いと代打男のアリバイ」の4編が収録されています。

八王子市警の椿木警部と小山田刑事が殺人事件の現場に赴くと、なぜかそこにはいつも、三つ編みに紺のワンピースの美少女が。屋敷で働くお手伝いさんの彼女は、「私には犯人が判る」と証言するのだが……。 家具や家電がさかさまになった事件現場の謎を解く「魔法使いとさかさまの部屋」。体力自慢の犯人が、その馬鹿力を活かして犯行を遂げる「魔法使いと失くしたボタン」。物まね芸人が自らの信念をかけたトリックを仕掛ける「魔法使いと二つの署名」。野球選手が、自分に瓜二つの人間を使ってアリバイをつくる「魔法使いと代打男のアリバイ」。本格ミステリーと魔法の融合をたっぷり楽しめる、中篇4作を収録。
(出版社HPより)

タイトルに偽りありです。魔法使いは完全犯罪を目論んだりしません。映画にもなった有名なSF小説にひっかけたものですね。

内容はユーモア倒叙ミステリです。
物語早々に魔法使い少女マリィによって犯人が明らかにされます。
しかしそれだけでは逮捕できるはずもなく、小山田聡介刑事が「どうやって」殺人を犯したのかが主眼となります。
それだけに作家の力量が問われるのではないかと思います。東川さんは見事クリアしているように思えます。

また、ユーモア部分も健在です。
美貌で傍若無人のキャリア警部 椿木綾乃は東川作品では典型的な女性キャラです。部下の小山田聡介刑事はドMで椿木警部に蹴られることに快感を得ています。そして魔法使いのマリィは天然ボケ炸裂。

彼らの関係性も含めて続編が楽しみです。

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朝井リョウさん「星やどりの声」 [本☆☆]


星やどりの声 (角川文庫)

星やどりの声 (角川文庫)




兄弟6人の視点で日常を描きながらの家族ドラマです。
次々に巣立っていきながらも「輪」は途切れない、そんなラストが沁みました。

「長男光彦」「三男真歩」「二女小春」「二男凌馬」「三女るり」「長女琴美」の6章で構成されています。

一家の大黒柱の父が、四年前に病気で他界した早坂家。それ以来、純喫茶「星やどり」は母が切り盛りしている。父が残してくれた、「星やどり」自慢のビーフシチュー、夜空から星が降り注ぐ星型の天窓。そしてブランコ形の席には、常連客の“ブラウンおじいちゃん”が、今日も静かに座っている。
早坂家は三男・三女、母ひとり。長女・琴美は、働きながら、「星やどり」で母の手伝いをしている。長男・光彦は、大学四年の夏、実らない就職活動の真っ最中。二女・小春は、化粧で背伸びし、どこか空虚な日々を送り、三女・るりは、何かから逃れるように自らを律し、真面目な高校生活を過ごしている。二男・凌馬は、輝かしい少年の日々を、明るく消費。そして、三男・真歩は、カメラをぶら下げ、街を歩く……。
様々な葛藤と悩みを抱えた早坂家。一見穏やかな日々が流れているようだったが!?
(出版社HPより)

結末は出来過ぎな感もありますが、小説なんだからいいじゃないかと思います。もっとも、フィクションだからといって許容できる線引きというものがありますし、読み手によっても違うのでその辺は難しいとは思います。

三者三様(この場合は六者六様?)の兄弟の様が描かれていると思いました。父を喪った年代が与える影響をどう性格に反映させるかまで考えられているのかな、と感じました。

小春や凌馬の章の(いい意味で)バカな高校生の遣り取りが笑えます。

その反面、真歩の章は掘り下げが足りないように感じました。最年少の彼だからこそ見えている、感じていることがもっとあるのではと思い、物足りなさを覚えました。

全体的にやや掴みづらい表現が読むリズムを途切れさせました。残念だなあ。

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宮木あや子さん「校閲ガール」 [本☆☆]


校閲ガール<校閲ガール> (角川文庫)

校閲ガール<校閲ガール> (角川文庫)




テレビドラマ化されていたので読んでみました。
お仕事小説のくくりなんでしょうが、あまりリアリティを感じませんでした。

「校閲ガール!?」「校閲ガールと編集ウーマン」「校閲ガールとファッショニスタとアフロ」「校閲ガールとワイシャツとうなぎ」「校閲ガール〜ロシアと湯葉とその他のうなぎ」「愛して校閲ガール」の6編が収録されています。

憧れのファッション誌の編集者を夢見て出版社に就職した河野悦子。しかし「名前がそれっぽい」という理由で(!?)、配属されたのは校閲部だった。校閲の仕事とは、原稿に誤りがないか確かめること。入社して2年目、苦手な文芸書の仕事に向かい合う日々だ。そして悦子が担当の原稿や周囲ではたびたび、ちょっとしたトラブルが巻き起こり…!?読んでスッキリ元気になる!最強のワーキングガールズエンタメ。
(「BOOK」データベースより)

校閲という仕事は知ってはいて、「縁の下の力持ち」というイメージだったので、読んでいて違和感ありありでした。そんなアクティブで仕事回るの?と。

ファッション誌の編集者を目指す河野悦子が校閲者として様々なジャンルの本に向き合うところが面白いですし、ドラマがあります。

テレビドラマもそうですが、河野悦子は机の上だけで終わらせないんですよね。とにかく現場に出ていく。それによって作家の秘したものや作品に籠めたものが明らかになるという小説上の面白さはあるんですが、実際の校閲者が同じなのかという疑問があります。上司がそれを許すのかとも思います。リアリティさを感じないです。

河野悦子のべらんめえ調のセリフって、周囲で聞かないなぁ。環境のせいでしょうか。

ところどころ「校閲」で気になる箇所がありました。。。角川クオリティ?

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柚木麻子さん「私にふさわしいホテル」 [本☆☆]


私にふさわしいホテル (新潮文庫)

私にふさわしいホテル (新潮文庫)




不屈の魂を持つ駆け出し新人作家の抱腹絶倒の奮闘記です。

「私にふさわしいホテル」「私にふさわしいデビュー」「私にふさわしいワイン」「私にふさわしい聖夜」「私にふさわしいトロフィー」「私にふさわしいダンス」の6編が収録されています。

「元アイドルと同時受賞」という、史上最悪のデビューを飾った新人作家・中島加代子。さらに「単行本出版を阻止される」「有名作家と大喧嘩する」「編集者に裏切られる」etc.絶体絶命のトラブルに次々と襲われる羽目に。しかし、あふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで加代子は自分の道を切り拓いていく―。何があってもあきらめない不屈の主人公・加代子。これぞ、今こそ読みたい新世代の女子下剋上物語。
(「BOOK」データベースより)

作家として生き残るため、のし上がるためには手段を選ばない主人公の執念とド迫力に圧倒され、次はどんな手を使ってくるんだろうというワクワクした気分が生まれます。

普段目にすることのない文壇や出版業界の裏事情とドロドロした人間関係が描かれます。

加代子が最初に陥れた大御所作家の東十条宗典が全編を通して登場するのですが、お互いに影響を及ぼし合っていくのがストーリイに味付けをしているように思いました。
決して相容れない関係なのに、利害が一致すると休戦協定を結んで共通の敵に攻撃を仕掛ける場面などは思わずニヤニヤ笑いをしてしまいました。

朝井リョウや宮木あや子などの作家が実名で登場します。それを作者の自己顕示欲ととるか、あざといと取るかは読者によって分かれるかもしれません。

しかし、最後の「私にふさわしいダンス」は狂気さえ感じる復讐劇で怖かったです。

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