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樋口有介さん「片思いレシピ」 [本☆☆]


片思いレシピ (創元推理文庫)

片思いレシピ (創元推理文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/05/12
  • メディア: 文庫



柚木草平シリーズ番外編とでもいえばいいでしょうか。柚木草平の小学生の娘・加奈子が学習塾で起こった殺人事件について同級生の家族が行う素人捜査に巻き込まれてしまうというものです。

ママが中国に取材旅行に行っている間に、親友の妻沼柚子ちゃんと一緒に通ってる塾の先生が、誰かに殺されちゃったの。人形のような美少女の柚子ちゃんを贔屓して、体の弱いことを心配したり、こっそりお菓子もあげていた先生なんだ。どういうわけか柚子ちゃんのお祖父さんや、ちょっと風変わりなお兄さんなど、妻沼家のご家族とともに事件の調査をすることになって、ってちょっとちょっとパパ聞いてる!? あの柚木草平の愛娘・加奈子ちゃんの探偵行と淡い恋心を瑞々しい筆致で描く、さわやかな余韻が秀逸なミステリ。ファン必読の〈柚木草平シリーズ〉番外編。
(出版社HPより)

加奈子が語り手となるのですが、口調が父親そのものでかなり違和感がありました。
「柚木草平シリーズ」の系譜という狙いがあったのかもしれませんが、さすがに小学生に語らせるにはオヤジ臭いです。

加奈子が探偵役なのかと思ったのですが、どちらかというと巻き込まれ役でした。文庫版あとがきで樋口さんが執筆の発端から役回りまで書かれていて納得しました。
柚木草平が電話口で加奈子にサジェスチョンを与えるのはありだな、と思いました。
けれども、ミステリ面でも淡い恋心という面でも物足りなさが残りました。

辺り一帯の地主だったというお金持ちの妻沼一家の変人を超越した変人ぶりがすごいです。

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有川浩「レインツリーの国」 [本☆☆]


レインツリーの国 (新潮文庫)

レインツリーの国 (新潮文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



図書館戦争シリーズの中で同名の小説が出てくるそうです。図書館戦争シリーズは読んでいませんが、もちろん大丈夫でした。

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった―。
(出版社HPより)

この本に関しては、解説を先に読むことはお勧めしません。ネタバレほどではありませんが、ひとみの隠していた秘密(ほどではないけれど)が明かされるまでの主人公の伸の戸惑いをともに感じるという過程が半減してしまうからです。

恋愛ものとしてはスタンダードなものだと思います。
ネットで知り合い、実際に会って恋愛感情を抱く。そこにひとひねりを加わえることで、ただのラブストーリイでなくなっているように思います。

感情をぶつけあう。互いを理解し合う。現実にはなかなかできることではないと思います。
メールや会話の(いい意味での)軽さが重くなりがちな物語を軽減しているように感じました。

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石持浅海さん「カード・ウォッチャー」 [本☆☆]


カード・ウォッチャー (ハルキ文庫 い 18-1)

カード・ウォッチャー (ハルキ文庫 い 18-1)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2014/07
  • メディア: 文庫



総務担当社員と労働基準監督官との労災の臨検を巡る一風変わったミステリです。
石持さんらしい作品です。

ある日、遅くまでサービス残業をしていた株式会社塚原ゴムの研究員・下村が、椅子の背もたれに体重をかけ過ぎて後方に倒れてしまった。そのとき、とっさに身を守ろうとして手首をけがしてしまう。その小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。突然決まった立ち入り検査に、研究総務の小野は大慌て。早急に対応準備を進めるが、その際倉庫で研究所職員の死体を発見してしまう。所内で起きた、変死。小野は過労死を疑われることを恐れ、労働基準監督署の調査員に死体が見つかることを回避するため、ひたすら隠ぺいしようとするのだが……。
(出版社HPより)

過剰なサービス残業(もちろん違法です)を会社ぐるみで行うという下地はどこかで見聞きしたような現実で、なんだか身につまされる内容でした。

労働基準監督署の調査員が探偵役、民間企業の総務部員が隠ぺいしようとします。ミステリというよりは頭脳ゲームといったほうがよさそうな感じです。

終わり?でも残りページあるな? と思ったところからまさかの推理劇。
しかも意図しない結末になんか切なくなりました。

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有栖川有栖さん「臨床犯罪学者・火村英生の推理 I 46番目の密室」 [本☆☆]


臨床犯罪学者・火村英生の推理 I    46番目の密室 (角川ビーンズ文庫)

臨床犯罪学者・火村英生の推理 I 46番目の密室 (角川ビーンズ文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/29
  • メディア: 文庫



レーベルゆえか、どうもイラストが…ねぇ。
ドラマを見てから読んだので、火村英生がかなりべらんめえ口調だったのが違和感として残りました。

英都大学社会学部の若き助教授、火村英生。その明晰な頭脳で難事件を解決し、「臨床犯罪学者」と呼ばれている。そんな火村が心を許す唯一の存在は、大学時代からの親友である推理作家、有栖川有栖。冬のある日、有栖川が大御所推理作家・真壁聖一の別荘に招かれたことから、2人は軽井沢を訪れることに。しかしなんと真壁自身が「密室」で殺される事件が起き…!?伝説の名探偵と推理作家の最強コンビ、ビーンズ文庫に登場。
(「BOOK」データベースより)

大学のセンセイが探偵役をするというと、東野圭吾さんのガリレオシリーズを思い浮かべるんですが、それより前なんですね。しかも「犯罪社会学」の研究者として犯罪現場をフィールドワークとしているので事件に積極的に関与しているようです。

ワトソン役は駆け出しミステリ作家の有栖川有栖。作者と同じ名前です。

この二人の関西弁(京都弁?)の掛け合いが面白いです。大学時代からの友人という気軽さや漂ってきます。

密室を扱ったミステリも面白いです。謎解きも、あちこちに張られた伏線の回収もすんなり落ちました。

後続の作品も読んでみようと思います。

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五十嵐貴久さん「魅入られた瞳  南青山骨董通り探偵社II」 [本☆☆]


魅入られた瞳: 南青山骨董通り探偵社II (光文社文庫)

魅入られた瞳: 南青山骨董通り探偵社II (光文社文庫)

  • 作者: 五十嵐 貴久
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/06/11
  • メディア: 文庫



「南青山骨董通り探偵社シリーズ」第2弾です。
今回もなかなかハードです。

正式に探偵社に入社した井上雅也。だが、地味な仕事続きで不満気味。そんな折、社長の金城から任されたのは、商社マンの美しき妻・志津恵をクリニックへ送迎することだった。渋々引き受けた雅也だったが、一目で彼女に魅了される。着々と仕事を進める中、送迎車の消失や謎の男からの暴行など予期せぬ事態が起こる。探偵社の面々を待つ驚愕の真実とは!? シリーズ待望の第二弾!
(出版社HPより)

テンポのいい会話と、メリハリのきいたスリリングな展開にあっという間に読了してしまいました。
ハードな情景描写もありますが、キャラの立った探偵たちの軽妙なセリフの遣り取りが中和してくれます。

探偵見習レベルの井上に突きつけられるシビアな現実。それを繋ぎ留めるのが社長の金城です。

まだ探偵たちの過去や繋がりといったものが明かされていませんので、次作も楽しみです。

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乾くるみさん「セブン」 [本☆☆]


セブン (ハルキ文庫)

セブン (ハルキ文庫)

  • 作者: 乾 くるみ
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/07/11
  • メディア: 文庫



怒涛のロジカル攻めです。
表題作以外にも「7」がキーワードの作品が詰め込まれています。

「ラッキーセブン」「小諸-新鶴343キロの殺意」「TLP49」「一男去って…」「殺人テレパス七対子」「木曜の女」「ユニーク・ゲーム」の7編が収められています。

一見シンプルなトランプの数当てゲームが、生死をかけた心理バトルへと変貌する「ラッキーセブン」ほか、時間を何度もワープする男の話――「TLP49」、超ショートショート――「一男去って……」、戦場で捕らえられた兵士の生き残り作戦とは――「ユニーク・ゲーム」などロジカルな企みに満ちた七つの物語。トリッキーな作品世界に二度読み三度読み必至の驚愕の短篇集。
(「BOOK」データベースより)

しかし、設定が面倒くさい。
表題作の「セブン」はじっくり読む分には面白いのですが、電車などの移動中に読むには集中できずにほとんど飛ばし読みでした。

それぞれの物語は趣向を凝らしていて、読んでいて楽しかったです。
頭の体操にもいいかもしれませんが、集中できない環境だったので個人的に効果はなかったです。

実に乾さんらしい作品でした。

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伊坂幸太郎さん「残り全部バケーション」 [本☆☆]


残り全部バケーション (集英社文庫)

残り全部バケーション (集英社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/12/17
  • メディア: 文庫



「らしい」といえば「らしい」のですが、その「らしさ」が物足りないです。うまく説明できないんですけれど。

「残り全部バケーション」「タキオン作戦」「検問」「小さな兵隊」「飛べても8分」の5編が収められています。

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
(「BOOK」データベースより)

時系列も登場人物も(岡田と溝口以外は)バラバラですが、最後の最後でパズルのピースがぴったり合うような結末は感嘆ものです。
テンポのいい文章とユーモアにあふれた会話はページを繰りたくなります。
流石は伊坂さんといいたくなるようなエンタメ作品に仕上がっています。

けれども、読後の余韻にひたれないような気がして、物足りなさを感じてしまっていました。
贅沢な要求だとはわかっているんですけれど。

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長嶋有さん「佐渡の三人」 [本☆☆]


佐渡の三人 (講談社文庫)

佐渡の三人 (講談社文庫)

  • 作者: 長嶋 有
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/12/15
  • メディア: 文庫



映画化もされた『ジャージの二人』とそっくりなタイトルに思わず読んでしまいました。
長嶋さんらしいゆるい展開を楽しみました。

「佐渡の三人」「戒名」「スリーナインで大往生」「旅人」の4編が収録されています。

物書きの「私」は、ひきこもりの弟、古道具屋の父とともに佐渡への旅に出る。目的は、祖父母の隣家に住む「おばちゃん」の骨を、郷里の墓に納骨すること。ところが、骨壷をユニクロの袋に入れて運ぶくらい儀礼にかまわぬ一族のこと、旅は最初から迷走気味で・・・。表題作「佐渡の三人」に始まり、「戒名」「スリーナインで大往生」「旅人」と、一族の佐渡への「納骨」の旅を描く連作長編小説。
(出版社HPより)

納骨のために父親の郷里の佐渡に向かう親子を描いた、ただそれだけの物語なんですが、なぜか面白いんです。
全体的に不真面目で不謹慎だからかもしれません。(骨壺をユニクロの袋に入れちゃうところなんか)
でも、それを許容できてそれを面白がることができる雰囲気をこの作品は持っているような気がします。

その不真面目や不謹慎は家族だから許されるものでもあるような気がします。

つまるところ、秀逸な肩肘張らない家族の物語です。

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島本理生さん「ナラタージュ」 [本☆☆]


ナラタージュ (角川文庫)

ナラタージュ (角川文庫)

  • 作者: 島本 理生
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 文庫



悲恋とも純愛ともいえない恋愛小説です。
けれども22歳でこの作品を書き上げたのはすごいと思います。

お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある―大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。
(「BOOK」データベースより)

それぞれの登場人物の不安定な感情と行動が描かれていると思います。若さゆえの繊細な心情が、若い作者ならではの視点で描かれていると思いました。
ただ、ところどころで主人公の行動に共感できない部分があって感情移入できませんでした。

泉が思いを寄せる葉山先生のどっちつかずな態度にも煮え切らないものを感じてしまい、そこまで想う相手なのかと疑問に思ってしまい、さらに感情移入できない悪循環に陥ってしまいました。

どうしても中沢けいさんの『海を感じる時』と比べてしまいます。
テクニック面ではともかく、心に訴えかけるものがあるという点では中沢さんかな、と個人的に思いました。

2017年10月に映画公開されます。
http://narratage.com/

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東川篤哉さん「魔法使いと刑事たちの夏」 [本☆☆]


魔法使いと刑事たちの夏 (文春文庫)

魔法使いと刑事たちの夏 (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/05/10
  • メディア: 文庫



『魔法使いマリィ』シリーズ第2弾です。
安定のコメディミステリです。おふざけのようで、しっかりとミステリしてます。

「魔法使いとすり替えられた写真」「魔法使いと死者からの伝言」「魔法使いと妻に捧げる犯罪」「魔法使いと傘の問題」の4編が収められています。

『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?』で大暴れした魔法使いのマリィと、八王子署の変態刑事、小山田聡介が帰ってきました!
小山田邸で家政婦として働くことになったマリィ。
家事をしながら、聡介の持ち帰る事件に首を突っ込む。
「また殺人事件? 犯人が誰かぐらいは、魔法で教えてあげられるわよ」
「いや遠慮する。いつまでも怪しげな魔法に頼ってばかりじゃ、刑事として情けない」
拒絶されながらも聡介のために箒で奔走するマリィ。
そして、マリィの三つ編みが青白く光るとき、かならず騒動が……!
(出版社HPより)

倒叙ものなので、初めから犯人が明かされていて、そのうえでマリィの魔法によって聡介も犯人が分り、トリックを見破るパターンは前作と同じです。
まっとうな(?)謎解きもあれば、「おいおい (^^;」というような結末もあります。それはそれで楽しめます。

椿姫こと椿木綾乃警部の罵倒に対するドMな聡介の倒錯的感覚も笑えますし、聡介とマリィの夫婦漫才のような掛け合いも楽しいです。

次作も楽しみです。

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