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大倉崇裕さん「オチケン探偵の事件簿」 [本☆☆]


オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)




前作の『オチケン!』『オチケン、ピンチ!!』を読んでいませんでした。
しかし、大倉さんはいろんなことに造詣が深いですね。

「幻の男」「高田馬場」の2編が収録されています。

究極の巻き込まれ型でお人好し探偵が、キャンパスで起こる奇怪な事件の数々に挑む。事件を解く鍵は落語にアリ?
大学入学早々、落語にまったく興味がないのに、廃部寸前のオチケン(落語研究会)に入部させられた越智健一(おちけんいち)。風変わりな二人の先輩にふりまわされ、キャンパス内で起きる奇妙な事件の捜査に駆り出され、必修科目の出席もままならない中、大学は夏季休暇に突入していた。宿題をきっちり仕上げ、前期のリベンジを誓う越智だが、学生落語選手権で優勝を狙う大学間の抗争に巻き込まれ、次々と予想だにしない事件に直面するはめに……。単位取得が遠のいていく、オチケン探偵の活躍を描く連作ミステリー。オチケンの運命や、いかに!?
(出版社HPより)

新入生が変人の先輩に振り回される学園ものが多いのはなぜなんでしょう?
「先輩には逆らえない」という抑圧的なムチャ振りに翻弄される姿がコメディタッチになるんでしょうか。

謎解きが物語中に披露される落語の内容と絡んでくるというのは面白い趣向です。

1作目、2作目を読まねば。

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太田忠司さん「セクメト」 [本☆☆]


セクメト (中公文庫)

セクメト (中公文庫)




ハイブリッド警察小説って、そういうことね。。。

警視庁捜査一課のエリート刑事・和賀千蔭が追う連続「殺人鬼」殺人事件。遺体は体の一部を抉られ、さらに現場には必ず一人の女子高生が現れていた。謎の言葉「わたしはセクメト」わ残し消えた彼女の正体とは?そして事件の裏に潜む、知ってはいけない巨大な闇とは!?驚愕のハイブリッド警察小説シリーズ始動!!
(「BOOK」データベースより)

ミステリなのか、SFなのか、警察小説なのか、物語が進むにつれて様相が変わっていきます。
最後にはごちゃ混ぜになって、もはやジャンルがどうとかいうレベルではなく、流されるままに楽しめ、という小説だと思いました。

色々と謎は残りますが、続編で明かされるんだろうなと思いました。

セクメトの説明のくだりは「トンデモ」系の妄想に思えてしかたありませんでした。
それでも読ませてしまうのは太田さんの筆力でしょうか。

ただ、情報をリークしていた者の正体に意外性がなくてがっかりです。

混沌、といった印象です。

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西條奈加さん「無花果の実のなるころに」 [本☆☆]





西條奈加さんの作品は初めて読みます。
創元推理文庫なのでミステリかと思ったら、人情ものでした。

「罪かぶりの夜」「蟬の赤」「無花果の実のなるころに」「酸っぱい遺産」「果てしのない噓」「シナガワ戦争」の6編が収録されています。

お蔦さんは僕のおばあちゃんだ。もと芸者でいまでも粋なお蔦さんは、面倒くさがりなのに何かと人に頼られる人気者だ。そんな祖母と僕は神楽坂で暮らしているけれど、幼なじみが蹴とばし魔として捕まったり、ご近所衆が振り込め詐欺に遭ったり、ふたり暮らしの日々はいつも騒がしい。神楽坂界隈で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する! あたたかな人情と情緒あふれる作品集。
(出版社HPより)

創元推理文庫なので(?)連作短編集で、1冊の作品としての流れもあります。

神楽坂を舞台に、元芸者さんの祖母、中学生の主人公という設定に興味をもって読み始めたのですが、なんだかんだでお蔦さんのスーパーっぷりだけが残る。語り手の望を含めたほかのキャラの印象が残らない読後感でした。

主人公の望は中3にしては幼いような気がしました。家庭の事情で祖母と二人暮らしで、料理がからっきしダメなお蔦さんに代わって、代々男が包丁を握ってきた家系ならば、もっと大人びていいような気がするのですが。

また、起こる事件がなかなか現代的というかシリアスなのに、結果的にいい人ばかりという結末はどうなんだろうと思いました。

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道尾秀介さん「光」 [本☆☆]


光 (光文社文庫)

光 (光文社文庫)




山間の湖畔の町に暮らす小学生たちの夏から冬にかけて日々を描いた作品です。大仕掛けはないですが、「日常の謎」を散りばめたどこか懐かしさを感じる作品です。

親友の慎司は手先が不器用で、お人好し。宏樹は自慢話ばかり。清孝は哀しいことがあって、少しだけ大人びた。慎司の姉の悦子は、まだ「男友達」だった――。都会から少し離れた山間の町で、小学四年生の利一は、仲間とともに、わくわくするような謎や、逃げ出したくなる恐怖、わすれがたい奇跡を体験する。まるで自分の思い出を振り返っているような自然な読み心地と、小説作品にしか辿り着けない感動。俊英、充実の最新作!
(出版社HPより)

語り手の利一、友人の慎司、宏樹、清孝、悦子たちが際立ってはいなくてもキャラが立っていて、それが家庭事情に沿ったもので身近に感じました。

道尾さんらしい、意表を衝いたどんでん返しはなく、残念でした。

とはいえ、最近の道尾さんの作品の傾向からすると人間関係、家庭環境、友情といった少年時代の日常と成長を描いた作品というのは受け止められるものと思います。

とはいえ、個人的にはまだ、初期の道尾さんらしさとのギャップを受け止められずにいるわけですが…。

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石持浅海さん「フライ・バイ・ワイヤ」 [本☆☆]


フライ・バイ・ワイヤ (創元推理文庫)

フライ・バイ・ワイヤ (創元推理文庫)




近未来学園恋愛ミステリです。いろいろ盛りすぎ[わーい(嬉しい顔)]

隆也のクラスの転入生は、二足歩行のロボットだった! これは病気の少女をロボットを通じて通学させる実験だという。奇妙な転入生にも慣れてきたある放課後、校内で級友が撲殺され、彼女(ロボット)の背中が被害者の血で染まっているのが発見される。殺害の動機は? ロボットと事件の関わりは?! 友人の死に直面した隆也たちを新たな事件が襲う。近未来を舞台にした青春本格ミステリ。
(出版社HPより)

警察の科学捜査の及ばない状況下で、「頭の切れる」登場人物たちが論理だけを積み上げて事件解決につなげるという形のミステリが多い石持さんですが、それを逆手に取ったような作品です。今回は「そういう」登場人物は少ないのですけれど。

犯人と被害者だけしかわかり得ない(という)動機によって起こった殺人事件というのは、裏を返せば警察はそれ以外の要素で犯人逮捕にたどり着くのではないかと思うわけで、近未来の話なのに警察の科学捜査が全く進化していないように感じるのはなぜだろう(笑い)。

だんだんと高まっていく恋愛の要素は、なんだかとってつけたようでした。

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東野圭吾さん「禁断の魔術」 [本☆☆]


禁断の魔術 (文春文庫)

禁断の魔術 (文春文庫)




ガリレオシリーズ第8弾です。
短編で発表した作品を長編化したものです。たまにありますよね、このパターン。

高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!
(「BOOK」データベースより)

ストーリイはシンプルです。シンプルゆえに物足りなさを感じました。

科学技術を使ったトリックにも意外性を感じませんでした。やはり初期のシリーズのような斬新さは期待できないんでしょうか。

東野さんの書きたいものが人間ドラマに移っているためであれば、仕方ないですね。
しかし、『容疑者Xの献身』ほどの感動もなく、ぼやっとした読後感でした。


それにしても、レールガンを実用化してしまう米軍って、やっぱすごいわ。

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渡来ななみさん「天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜」 [本☆☆]


天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜 (メディアワークス文庫)

天体少年。―さよならの軌道、さかさまの七夜 (メディアワークス文庫)




タイトルの「。」って必要?

ぼくは明日、昨日のきみとデートする』つながりで読んでみました。
個人的には『ぼくは明日~』のほうが好みです。

天文学者の父親とともに遠く南国の孤島に暮らしている少女・海良。ある日、彼女が闇夜の草原で出会ったのは、星空から降りたった不思議な少年・τ(タウ)だった。
「僕という天体は、宇宙を未来から過去へと進んでいる。でもこの姿を浮かべていられるのは、ほんの七日間だけ。だから今夜は僕にとって、君との最後の夜なんだよ――」
果たしてその謎めいた言葉の通りに、海良は毎夜、タウと出会い続ける。約束された最初の出会いの、避けられない最後のお別れの時へ向けて――。
時を遡る少年とすれ違い続ける少女が織りなす、たった七夜のラブストーリー。
(出版社HPより)

途中でタネが明かされるのですが、分っていても時間が経つにつれてすれ違っていく想いに対する切なさが沁みます。

ラブストーリイであるととに、主人公の海良の成長物語でもあります。

ただ、設定が中学生だから仕方ないのかもしれませんが、主人公の地の文が幼くて読み進めるのに抵抗がありました。

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海堂尊さん「玉村警部補の災難」 [本☆☆]

今年もゆるゆると好きなことを綴っていこうと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。





「バチスタ」シリーズのスピンオフ作品です。
「デジタルハウンドドッグ(電子猟犬)」の異名を持つ加納警視正と、その相棒である玉村警部補が事件に挑む短編集です。

「バチスタ」シリーズでおなじみ加納警視正&玉村警部補が活躍する珠玉のミステリー短編集、ついに文庫化!出張で桜宮市から東京にやってきた田口医師。厚生労働省の技官・白鳥と呑んだ帰り道、二人は身元不明の死体を発見し、白鳥が謎の行動に出る。検視体制の盲点をついた「東京都二十三区内外殺人事件」、DNA鑑定を逆手にとった犯罪「四兆七千億分の一の憂鬱」など四編を収録。
(「BOOK」データベースより)

「バチスタ」シリーズ本編でもお馴染みの二人ですが、加納警視正の傍若無人な捜査に巻き込まれる玉村警部補の災難っぷりが面白いです。

DNA鑑定や歯型といった「絶対」と思い込んでいる技術の盲点をついたトリックもしっかりとミステリしてます。

それでいてAi(オートプシー・イメージング)の提唱も抜かりなく潜り込ませているところは流石。


「東京都二十三区内外殺人事件」では田口&白鳥コンビも登場します。
しかし、道一本ずれただけで扱いがこうも変わるとは…。

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七月隆文さん「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」 [本☆☆]





映画化されるということで読んでみました。我ながらミーハーだなあ。
SF的要素を絡めた純愛ものです。なにも考えずに物語に浸れます。(考えちゃいけない)

京都の美大に通うぼくが一目惚れした女の子。高嶺の花に見えた彼女に意を決して声をかけ、交際にこぎつけた。気配り上手でさびしがりやな彼女には、ぼくが想像もできなかった大きな秘密が隠されていて―。「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説。彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。
(「BOOK」データベース)

京都の叡山鉄道沿線や三条付近を舞台にしているので、聖地巡礼にもうってつけですね。

前半でカラクリが見えてしまいました。カラクリが見えるとともに結末も見えてしまいました。
個人的にはもうひとひねりあってもよかったと思います。まあ、あくまで「ツール」としてのカラクリであるなら必要もないのかもしれません。

恋愛ものとして浸れればいいのかもしれません。

細かいところで「~的な」という言い回しや「ポニテ」という短縮語が読んでいて引っかかりました。


う~む、キャストがイメージと違う…。
http://www.bokuasu-movie.com/

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米澤穂信さん「リカーシブル」 [本☆☆]


リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)




地方都市の伝承とミステリが融合した作品でした。
ただ、ちょっと重いなー。

越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ……。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。十代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。
(出版社HPより)

「タマナヒメ」という伝承が現代にも根付く街を舞台にした物語はなかなか興味深かったです。
ただ、逆に市街地(シャッター通りと化した商店街があるということはそこそこな規模の街だろう)で活きている伝承などあるのだろうか、という疑問もありました。

地方都市、地域の伝承、閉鎖された社会、と舞台設定が似ていて、ついつい大崎梢さんの作品と比べてしまいました。

中学生にして息苦しいまでにクラス内ヒエラルキーを気にするハルカというのは現実としてあるんでしょうか。朝井リョウさんの作品では高校生スクールカーストが描かれてはいましたが、更に進んでいる?

また、次第に明らかになっていく母親や弟との関係性や、ハルカの抱える孤独感・疎外感といったものが彼女の行動によってのみ露わになっていく描写は読んでいて痛みを感じました。

それだけに、壊しようのない地域性や排他性、閉鎖性の息苦しさとは反対に、ハルカの苦痛や抑え込んだ悲しみや怒りがやがてしなやかな強靭さに変わっていくラストが救いに思えました。

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