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若竹七海さん「静かな炎天」 [本☆☆]


静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫



有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾です。今回はそれほど不運ではありませんでした。(というか、前3作の不運っぷりがハンパなかった)

「青い影-七月-」「静かな炎天-八月-」「熱海ブライトン・ロック-九月-」「副島さんは言っている-十月-」「血の凶作-十一月-」「聖夜プラス1-十二月-」の6編が収められています。

ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。

この手の探偵ものには珍しく、しっかり歳を取っているので体力は落ちるし四十肩になるしで、ハードボイルド調の葉村晶の語り口が妙におかしく感じます。

探偵業といっても開店休業状態で、本業はミステリ専門の古書店のアルバイトというのが泣けます。しかも店長の有無を言わせぬ(というか意味の分からない論理で丸め込まれて)無理難題をこなす破目になる姿は(泣)
それでもってぶつくさ言いながらもしっかり依頼をこなす姿がハードボイルドです。恰好いい。

若竹さんらしいシニカルな結末も苦みがあっていいです。

寡作な作家さんですが、続編を期待します。

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大崎梢さん「忘れ物が届きます」 [本☆☆]


忘れ物が届きます (光文社文庫)

忘れ物が届きます (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: 文庫



蓋がされていた記憶があることがきっかけで明らかになり、謎が明らかになるというミステリです。
こういった仕掛けはよくありますが、読後感のいい作品集です。

「沙羅の実」「君の歌」「雪の糸」「おとなりの」「野バラの庭へ」の5編です。

不動産会社の営業で訪れた家の主人が、小学生の頃の自分を知っているという。驚いた自分にその元教師が語ったのは、なぜか二十年前に起きた拉致事件の真相を巡る推理だった。当時の記憶が鮮やかに蘇る……(「沙羅の実」)。長い日々を経て分かる、あの出来事の意味。記憶を遡れば、過去の罪と後悔と、感動が訪れる。謎が仕組まれた極上の「記憶」を五つ届けます。
(出版社HPより)

イジメや殺人などなかなか重い事件を持ってきながらも謎解きとエンディングではホッとするような読後感は大崎さんならではだと思います。

思い込みや思い違いで記憶していることはよくあることで、納得する結末もあったのですが、入り組んでいたり、ややこしかったりする部分がわかりにくくて、やや興醒めしました。

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北村薫さん「八月の六日間」 [本☆☆]


八月の六日間 (角川文庫)

八月の六日間 (角川文庫)

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫



ミステリかと思ったら、まさかの登山小説でした。
しかし、登山を全くしていない(インタビューで言っている)のに、こんな臨場感あふれる物語を作れるって、すごいですね。

「九月の五日間」「二月の三日間」「十月の五日間」「五月の三日間」「八月の六日間」の5編が収録されています。

雑誌の副編集長をしている「わたし」。柄に合わない上司と部下の調整役、パートナーや友人との別れ…日々の出来事に心を擦り減らしていた時、山の魅力に出会った。四季折々の美しさ、恐ろしさ、人との一期一会。一人で黙々と足を動かす時間。山登りは、わたしの心を開いてくれる。そんなある日、わたしは思いがけない知らせを耳にして…。日常の困難と向き合う勇気をくれる、山と「わたし」の特別な数日間。
(「BOOK」データベースより)

都会に暮らすアラフォー女性が日々のストレスを抱えながら仕事に打ち込んでいるときに出会った山の魅力をあますとこなく描いています。

槍ヶ岳に裏磐梯(の雪山)、常念岳など聞いたことのある山ばかりです。

四季折々の風景、解放感と忍び寄るトラブル。個性的な出会う人たち。
大自然の中に身を置く魅力と怖さが北村さんらしい柔らかい文章で描かれます。

都会の喧騒や軋轢と対極的な自然の佇まいの描写や、主人公の自問自答や回想シーンなど、山岳小説というハードでストイックなものではなく、ライトな登山小説だと思います。


特設サイトにはルート紹介もあります。
https://promo.kadokawa.co.jp/8gatu/

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桜木紫乃さん「蛇行する月」 [本☆☆]


蛇行する月 (双葉文庫)

蛇行する月 (双葉文庫)

  • 作者: 桜木 紫乃
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/06/16
  • メディア: 文庫



道東に暮らす女性たちと、東京へ駆け落ちした一人の女性との物語です。
幸せってなんだろう。

「1986 清美」「1990 桃子」「1995 弥生」「2000 美菜恵」「2007 静江」「2011 直子」の6編が収められています。

人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。―道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、引き寄せられていく―。彼女たちの“幸せ”はどこにあるのか?
(「BOOK」データベースより)

4年から7年という期間を置いて、性格も職業も違う女性たちが須賀順子という同級生と会うことで自分自身を振り返ります。
なかでも年齢を重ねることで感じ方が変わってくる描き方がうまいなあと思いました。更に日常生活のリアルな描写が登場人物たちを実在するかのように感じさせます。

各章のタイトルになっている女性たちの視点で物語が進められるのですが、彼女たちの閉塞感が重いです。
それに対する順子の暮らしはさほど変わらないのに、順子のいう「しあわせ」がどこにあるのか、自分と重ね合わせるさまが読んでいてじわじわとのしかかってきます。

辛くしんどいのにページを繰る手が止められない、そんな小説です。

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柏井壽さん「鴨川食堂いつもの」 [本☆☆]


鴨川食堂いつもの (小学館文庫)

鴨川食堂いつもの (小学館文庫)

  • 作者: 柏井 壽
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/01/04
  • メディア: 文庫



シリーズ第3作です。ややマンネリ気味ですかね。

「かけ蕎麦」「カレーライス」「焼きそば」「餃子」「オムライス」「コロッケ」の6編が収められています。

食にA級もB級もありまへんけど、人間にも一流も三流もありまへん。みな同じです。京都・東本願寺近くで鴨川流、こいし親娘が営む食堂では、思い出の「味」を捜してくれるという。父と一緒に食べた料亭のかけ蕎麦、娘が結婚前に作ってくれたカレーライス、初恋の相手との思い出が詰まった焼きそば、裏切ってしまった女性の実家で出された餃子、親友の母がふるまってくれたオムライス、空腹に耐えきれず手を出してしまったコロッケ。食が呼び覚ます温かな記憶にふれ、依頼人は明日への一歩を踏み出してゆく。
(「BOOK」データベースより)

依頼人の思い出の味を探して再現するという設定と、料理から依頼人が過去を知り、過去と向き合う展開が目新しかったのと、鴨川流の振る舞う「おまかせ」の料理の数々が魅力的でしたが、シリーズを重ねるにつれて「定型」がマンネリに感じるようになりました。

それでも思い出の味を探して日本各地に行き、素朴な料理に土地の風習やちょっとした工夫が込められていたりという発見があります。


こいしの年齢を知ってびっくりしました。この年齢の割にはものを知らなすぎます。少し幻滅しました。

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東野圭吾さん「祈りの幕が下りる時」 [本☆☆]


祈りの幕が下りる時 (講談社文庫)

祈りの幕が下りる時 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫



加賀恭一郎シリーズ10作目です。
加賀が捜査一課というエリート街道を捨ててまで所轄への異動を希望した理由が明らかになります。

悲劇なんかじゃない。これが私の人生。
加賀恭一郎は、なぜ「新参者」になったのか---。
明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。
シリーズ最大の謎が決着する。
吉川英治文学賞受賞作。
(出版社HPより)

一見関連のなさそうな3つの殺人事件が加賀の捜査によって繋がりが明らかになる過程が見事です。
更には過去と現在の謎が繋がるという構成も巧み。

なんといっても加賀恭一郎の過去が明らかになる場面に感動しました。
なぜ父親と対立したのか、これまで影すらなかった母親とはどんな人だったのか。

ただ、犯人に同情の余地は十分にあるのですが、どこか感動までは遠いです。
その意味では『白夜行』は素晴らしい作品だったと思います。


映画も公開中です。
http://inorinomaku-movie.jp/

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北山猛邦さん「先生、大事なものが盗まれました」 [本☆☆]


先生、大事なものが盗まれました (講談社タイガ)

先生、大事なものが盗まれました (講談社タイガ)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/19
  • メディア: 文庫



凪島という架空の島を舞台に「何が(What?)盗まれたか?」をテーマにしたミステリです。

「先生、記念に一枚いいですか」「先生、待ち合わせはこちらです」「先生、なくしたものはなんですか」の3つの中編が収められています。

愛や勇気など、形のないものまで盗む伝説の怪盗・フェレス。その怪盗が、凪島のアートギャラリーに犯行後カードを残した!
灯台守高校に入学した雪子は、探偵高校と怪盗高校の幼馴染みとともに捜査に乗り出す。だが盗まれたものは見つからず、事件の背後に暗躍する教師の影が。
「誰が(Who?)?」ではなく「どうやって(How?)?」でもなく「何が(What?)盗まれたのか?」を描く、傑作本格ミステリ誕生!
(出版社HPより)

「猫柳十一弦」シリーズで探偵助手学部なるものを作り出した北山さんですが、今度は「探偵を養成する『御盾高校』」、「怪盗の技術を教える『黒印高校』」「悪事の前になると輝く、という灯台の灯が入ったペンダントが配られる『灯台守高校』」という設定を作り出し、幼馴染3人をそれぞれ配して怪盗フェレスを追いかけさせます。

設定も登場人物たちも面白いです。探偵と怪盗と「灯台守」が均衡を保っているというのも面白い。

しかし、モノではなく、概念を盗むとか、難しい。。。
わかったような、わからないような。。。

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有栖川有栖さん「臨床犯罪学者・火村英生の推理 II ロシア紅茶の謎」 [本☆☆]


臨床犯罪学者・火村英生の推理 II ロシア紅茶の謎 (角川ビーンズ文庫)

臨床犯罪学者・火村英生の推理 II ロシア紅茶の謎 (角川ビーンズ文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/28
  • メディア: 文庫



シリーズ2作目は趣向に富んだ作品集で、読みやすく面白いです。

「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ルーンの導き」「ロシア紅茶の謎」「八角形の罠」の6編が収められています。

エラリー・クイーンの〈国名シリーズ〉のひそみに倣(なら)った会心の第1作品集。奇怪な暗号、消えた殺人犯人、ダイイングメッセージ。そして極めつきの「読者への挑戦」付き犯人探しなど、本格ミステリの醍醐味が味わえる粒ぞろいの6篇。犯罪臨床学者・火村英生と駆け出しミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビ!
(出版社HPより)

暗号もの、密室状況での人間消失、ダイイング・メッセージ、毒殺トリック、読者への挑戦状つき犯人探し等々とミステリの様々なジャンル(?)を盛り込んだ作品で、どれもひねりが効いていて、種明かしで「なるほど!」と思わせるものばかりでした。

探偵役の火村英生と助手の有栖川有栖の関係性もいいですね。
関西弁全開の有栖と標準語の火村のやりとりも近しい感じで軽快です。

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太田忠司さん「明日、世界が終わるとしても」 [本☆☆]


明日、世界が終わるとしても (PHP文芸文庫)

明日、世界が終わるとしても (PHP文芸文庫)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/05/06
  • メディア: 文庫



単行本時の『虹とノストラダムス』を改題したものです。個人的には文庫版のタイトルのほうが好きです。
太田さんの自伝的要素を含んだ小説です。ミステリではありませんでした。

それは新たな悲劇か。それとも、悲劇を乗り越えた希望か。
一九九九の年、七の月、空から恐怖の大王が降ってくるだろう――ノストラダムスの予言を知った四人の高校生は「死」を思い、残された期限をどう生きるかを考える。その記憶は、大人になった彼らの人生に意外な影響を与えていくのだった。夢に挑む史生、意外な職につく恵津子。時代の荒波に揉まれながらも「生きること」に真摯に向き合う彼らの姿を描く、胸を揺さぶる物語。
(出版社HPより)

出版社の惹句は内容と多少違います。たまにありますが、これでいいのか?と思います。

この作品の登場人物たちのように思春期に『ノストラダムスの大予言』を知って影響を受けた人は多いんでしょうね。
その影響が歳を取るにつれて様々な形に変わっていく様子を描いています。なかなか重いテーマです。

はじめに改題したタイトルのほうが好き、と書きましたが、読み終わってから、改題しちゃいけなかったんじゃないかと気が付きました。。。

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池上永一さん「統ばる島」 [本☆☆]


統ばる島 (角川文庫)

統ばる島 (角川文庫)

  • 作者: 池上 永一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/05/23
  • メディア: 文庫



沖縄の八重山諸島を舞台にした短編集です。
各タイトルを見たら、半分近くの島を訪れていました。

「竹富島」「波照間島」「小浜島」「新城島」「西表島」「黒島」「与那国島」「石垣島」「鳩間島-文庫書き下ろし-」の9編が収められています。

沖縄県八重山諸島は古くから自らを象徴する星々を愛でてきた。星々には島ごとの神が宿り、親島である石垣島には、そんな島の神々が近況を伝え合う御嶽があった。八重山諸島の言い伝えによれば島と島は家族のようにつながり支え合っているという。神々が群星御嶽に集うとき、再会した親子の会話は宴となり、新たな物語となってともに輝きを増していく―。唄の島と言われる、鳩間島を舞台にした文庫版書き下ろし短編も収録!!
(「BOOK」データベースより)

池上さんの故郷でもある八重山諸島を舞台に、宗教観、民間伝承、風習、伝統を織り込んだ短編集はファンタジーあり、オカルトチックあり、伝奇小説ありとバリエーションも豊かです。

離島の島々がそれぞれ特色のある顔を持ち、魅力にあふれた物語を展開し、『石垣島』で集約する展開は疑似体験にも似た感覚を持ちました。

ある意味で池上さんの集大成といえる作品かもしれません。

…そういえば最近池上さんの新作を読んでないな…。

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