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津村記久子さん「とにかくうちに帰ります」 [本☆☆☆]


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

  • 作者: 津村 記久子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 文庫



勤め人あるあるです。ささやかな出来事を濾しとる手わざは職人芸のようです。

「職場の作法」に収録された「ブラックボックス」「ハラスメント、ネグレクト」「ブラックホール」「小規模なパンデミック」の4つの掌編と、「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」「
とにかくうちに帰ります」の2つの短編という不思議な構成です。

うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。職場のおじさんに文房具を返してもらえない時。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する時。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう時。それぞれの瞬間がはらむ悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に綴って、働き・悩み・歩き続ける人の共感を呼びさます六篇。
(出版社HPより)

こういう人、いるよね~、とか。荒天の中、帰宅する破目になった、とか。見落としがちななにげない題材を取り上げて、フィクションに落とし込む手腕がすごいと思います。
だって、あまりにリアリティを持たせてしまったら、腹立ちまぎれにそこらのものを破壊してしまうかもしれませんので。

人の文具などを持って行ってしまう人。げほごほ言いながら出社する人。
どこの職場にもいそうな人を優れた観察眼で描き出していると思います。

なかでもお気に入りは表題作です。
台風や爆弾低気圧のなか、なぜ人は帰宅しようとするんでしょうか。会社にいればそこそこ快適なのに。そういう自分も爆弾低気圧で軒並み電車が運休するなか、横殴りの風雨のなかをいつもの3倍の時間をかけて帰宅した経験があります。
自分の経験に置き換えながら読み進めて、最後の一行で腑に落ちました。
すばらしい。

おかしみの中に悲しみがあります。けれど悲嘆するものではなく、ほっとしたときに感じる悲しみのようなものを感じました。

何度でも読み返したい一冊です。

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