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佐藤正午さん「アンダーリポート」 [本☆☆☆]


アンダーリポート (集英社文庫)

アンダーリポート (集英社文庫)




相変わらず佐藤正午さんは上手い。そう思いました。
『ジャンプ』『Y』『5』といろんな趣向を凝らしていますが、今回はミステリタッチ…なのかな。

40歳過ぎの検察事務官・古堀徹の家に村里ちあきと名乗る大学生が訪れます。15年前、マンションの隣人だったちあきは父が殺された事件と当時の記憶について語ります。その殺人事件とは、村里賢一がマンションの駐車場で金属バットで撲殺されているのを古掘が第1発見者となったものでした。事件は通り魔事件として犯人不明のまま処理されていました。
しかし、ちあきの語る当時の記憶に自身もひっかかりを覚えて15年前の出来事を探り始めます。自分の日記や職権を濫用して入手した警察記録を読み返してある結論にたどり着きます。

ミステリかといわれたらミステリではありません。少なくともトリックに関しては。ミステリ仕立てのものです。殺人を犯さざるを得ない状況に追い込まれた、そして時効を過ぎても罪を背負っていかざるを得ない犯罪者の気持ちを古掘の視点と小説の構造に組み込ませているのだと思います。
読み終わって初めて冒頭のシーンの意味がわかりました。そして構成に込められた意味も。さすが、佐藤さん、です。

佐藤さんの描く主人公は皆、冴えない男です。離婚を経験し(あるいは女性に逃げられ)、堅実で有能ながら実は日々のルーティンをこなしているだけ。見た目はきちんとしているので職場の女性などはいい印象を抱いていることが多いのですが、実際を知ってしまうと…。
そんな主人公を強気の女性たちがあしらい、翻弄し、突き放します。全ては今の自分を守るため。
そういう、犯人の心理に踏み込むというミステリといえなくはないかもしれません。

佐藤さんの次回作が楽しみです。

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